知っておきたい!美容と健康を左右する「女性ホルモン」との上手な付き合い方
私たちの身体をコントロールしている女性ホルモンには、さまざまな役割があることを知っていますか?美容や健康にいい作用をもつ一方で、女性ホルモンが乱れることによって、不調や病気を引き起こしてしまうことも。女性ホルモンの働きを知り、上手に付き合う方法を探っていきましょう!
- 監修医師
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山田光泰先生日本産科婦人科学会認定、産婦人科専門医。大学病院等で不妊治療を中心とした最先端の医療に従事しつつ、厚生労働医系技官として母子保健施策の推進にも携わってきた。現在は、女性のライフステージに応じたウェルネス向上をサポートすべく、テクノロジーを活用した課題解決にも取り組む。
女性ホルモンのうれしい働き
「女性ホルモン」と聞くと、生理やPMSといった、ちょっと面倒でネガティブなイメージをもつ方も多いかも知れません。でも実は、さまざまな面で女性の心身を守ってくれる心強い存在でもあるんです。
- 記憶力を保つ
- 自律神経を安定させる
- 骨を丈夫にする
- 胃腸を丈夫にする
- 関節を柔らかくする
- 髪のハリとコシを保つ
- 肌をつややかに保つ
- 食欲を抑制する
- 代謝を上げる
- 脂肪の燃焼を促す
こうした恩恵を受けられるのは、女性ホルモンがたくさん分泌している女性ならでは。ただし、このエストロゲンの分泌量は、生涯を通じてずっと同じではなく、年齢によって大きく変化していきます。
年齢別の女性ホルモン分泌量の推移
下の図は、年齢とともに変わるエストロゲンの分泌量の推移です。
参考:高尾美穂著「大丈夫だよ 女性ホルモンと人生のお話111」P17/松村圭子著「これって女性ホルモンのしわざだったのね」P26エストロゲンの分泌が増え始めるのは、初潮を迎えた思春期のころ。そこから20代後半になると分泌量がピークに達し、30代前半くらいまでは安定します。そして30代後半から少しずつ減り始め、40代後半から大きな変動を経て、分泌量は一気に減少します。
年齢別の起こりやすい健康トラブル
エストロゲンの分泌量に伴い、起こりやすいトラブルや疾病も変化します。分泌量が多い年齢で発生しやすい疾患もあれば、少なくなるタイミングで現れる不調、分泌がなくなることで引き起こされるトラブルも。
女性ホルモンに関係して起こりやすい不調を、エストロゲン分泌量の推移に重ねて見てみましょう。
参考)厚生労働省「働く女性の心とからだの応援サイト」内「女性ホルモンとライフステージ」/対馬ルリ子著「女性ホルモンで世界一幸せになれる日本女性」P71分泌が不安定な10代~20代前半
女性ホルモンの分泌が始まるものの、まだまだ分泌量が不安定な時期。生理不順や生理痛に悩まされたり、学校や仕事を休むほど重症な「月経困難症」になってしまう人もいます。
また、受験や就活などのストレスなどもあいまって、不安定な女性ホルモンの分泌が情緒不安定につながることもあります。女性ホルモンの影響で丸みを帯びた体つきになるのは自然なことですが、この変化を太ったと勘違いして、過度なダイエットや摂食障害に陥ってしまうケースも少なくありません。
これらのトラブルは、女性ホルモンの分泌量が安定するにつれて落ち着いてくることがほとんどです。
分婦人科疾患のリスクが増す20~30代
女性ホルモンの分泌が安定する20代後半~30代前半は、出産に適した年齢でもあり、人生の中で体が丈夫なタイミングといえます。ただしこの時期の女性は、仕事や出産、子育てなどで多忙になり、自身の健康を後回しにしてしまう人も多くいます。
元気で健康なように見えても、「子宮頸がん」は20~30代の発症リスクが最も高く、他にも「子宮内膜症」や「子宮筋腫」のように20~30代からリスクが高くなる疾病もあります。これを防ぐには、健康診断や婦人科検診が非常に大切。「今は忙しいし、特に不調はないから…」と後回しにするのではなく、定期的な受診を心がけましょう。
女性ホルモンの大きな波にもまれる40代後半
40代後半~50代の更年期には、女性ホルモンの分泌の急激な低下に伴い、肩こりや頭痛、不眠、うつ、めまい、歯周病などのさまざまな不調が現れやすくなります。
このような更年期の不調については、女性ホルモン検査での閉経年齢の目安チェックや、漢方治療、ホルモン療法など、さまざまな予防・対策があります。不安を感じたら、早めに産婦人科医に相談すると安心です。
また、「卵巣がん」「子宮体がん」「乳がん」などはこの頃からリスクが上がります。早期発見できれば治療が可能な病気でもあるので、引き続き、定期的な検診はとても大切です。
女性ホルモンの分泌がほぼなくなる閉経後
閉経して女性ホルモンの分泌がなくなると、毎月の生理から解放される一方、エストロゲンの分泌による美容と健康をサポートする働きもほぼなくなってしまいます。シワやシミ、薄毛が気になったり、代謝が落ちて太りやすくなるといった変化が表れ、高血圧や動脈硬化など、生活習慣病のリスクも上昇します。
さらに女性ホルモンの分泌低下は、骨粗しょう症や関節炎、子宮体がんや乳がん…など、さまざまな病気にも関連してくるので、定期的な検診は必須です。
ライフステージに合わせた対策や環境づくりを心がけて
女性ホルモンは、女性の体を守ってくれる大切なホルモンの一つ。一方で、その分泌量の変動により、体や心に不調をきたす可能性もあります。その影響を最小限に抑えるためにも、年齢などによって変化する女性ホルモンの波や、女性ならではの疾患についてあらかじめ知っておくことが大切です。そして、まさかのときに早めに対策ができるよう、定期的に検査を受けるようにしましょう。かかりつけの産婦人科を見つけ、不調やトラブルを気軽に相談できる環境にしておくと安心です!