<インタビュー> 不妊治療で判明した「子宮筋腫」というハードル

子宮筋腫とは、子宮の筋肉にできる良性の腫瘍(しゅよう)のこと。20代から発生の可能性があり、30代の女性の3-5人に1人にみられるといわれている、ありふれた病気です。ほとんどは無症状で、検査で判明したとしても体に影響がなければ経過観察で終わることがほとんどです。「自覚症状もなかったから、特に気にしてなかった」と語るマホさんは、不妊治療でこの子宮筋腫が大きなハードルになったそう。子宮筋腫の発覚から手術、現在の様子までを詳しく聞いてみました。

自覚症状もなし。診断結果も「経過観察」

診察する医者

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編集部

子宮筋腫が見つかったのはいつ頃だったのでしょうか?

「35歳前後です。30代中盤まで婦人科検診にも子宮がん検診にも行っていなくて、婦人科の病気や検査まわりにはあまり重要性を見出していませんでした。ただ、生理前は気分の落ち込みがひどく、PMDD(月経前不快気分障害)*が強く出るタイプでした。30代中盤でPMDDが深刻に出てしまったことをきっかけに、初めて婦人科を受診しました。その際『今まで婦人科検診を受けたことがない』と医師に伝えたら『では一度、詳しく診てみましょう』となり、そこで子宮筋腫があることが判明しました」

*PMS(月経前症候群)のうち、特に心の症状の悪化がメインのものを指す

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編集部

そのときは、どんな心境だったんですか?

「担当医師からは『子宮筋腫はありますが、悪さ*をしていなければ治療をする必要もない大きさです。経過観察でいいでしょう』と言われて安心しました。その後自分でも子宮筋腫について調べてみたのですが、過多月経もひどい生理痛などもなかったので『なにか症状が出たら相談しにいこう』くらいに思って放置していました」

*子宮筋腫は、場合によって過多月経や貧血などを引き起こす可能性があります

不妊治療で子宮筋腫がハードルに。時間との勝負だった

カレンダーを見る女性

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編集部

実際に子宮筋腫を治療しようと思ったきっかけは何だったんでしょうか?

「結婚をして、不妊治療をはじめようと思ったタイミングです。当時38歳だったのですが、なかなか自然妊娠ができず、不妊治療をしようと夫と話し合いました。そこで意を決して不妊治療専門のクリニックに行って検査を受けたところ『2.6cmの子宮筋腫があり、早産・流産のリスクがあるため当クリニックでは不妊治療ができません』と言われました。そこのクリニックで決めているガイドラインに引っかかってしまったようで、その大きさでは治療ができないようでした。

他のクリニックも考えたのですが、その後よく調べたら、子宮筋腫がそこまで大きいと着床の可能性が下がる・出産まわりのリスクが高まるらしい、ということが分かりました。子宮筋腫による影響や自覚症状もなかったので、驚いたと同時に『計画が崩れる!』と焦りました」

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編集部

「計画が崩れる」というのは、具体的にどういうことでしょう?

「年齢も年齢だったので、早く不妊治療を進めたいと思っていたんです。着床の確率を上げ、早産・流産のリスクを下げるために手術をするとなると『手術後は3〜6カ月くらいの休養を挟んで不妊治療を開始する』ということを言われて。手術の予約もすぐに取れるわけではないので、最短でも半年から1年後からでないと不妊治療が始められないということがわかりました。40代目前の半年から1年って、すごく長くて。せっかく意を決して不妊治療を始めようと思ったのに、そのやる気が萎えるというか……その前にやらなくてはいけないタスクが増えて、心が折れそうになりました。なんでもっと早く治療しておかなかったのかな、とすごく後悔しました

とにかく早く不妊治療に取り掛かりたい思いが強く、すぐに精密検査を受けて、3カ月後の手術を予約しました。3カ月後の手術枠が確保できたのもラッキーでしたね。場合によってはもっと先の日程しか空いていないことも多いようだったので。とにかく不妊治療を始めることが第一の目標だったので、手術に対する怖さは特にありませんでした」

再発した子宮筋腫。そして「子宮摘出」という選択

お腹をさする妊婦 イメージ

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編集部

その後、不妊治療はスムーズに進められたのでしょうか?

「はい。手術は無事終了して、運良く半年後には不妊治療をはじめることができました。ただ、不妊治療はうまくいかず……。しばらくがんばったのですが、体への負担も大きく、結局、不妊治療は諦めました。

その後、40代に入って突然、過多月経がひどくなり始めました。症状が辛くて外にも出掛けられず、過多月経用のナプキンを使っても30分で交換しないといけないほどの出血が起きるようになって『これはなにかあるな』と思いました。それでも、婦人科での待ち時間が億劫だったこと、月に1-2日寝込めばどうにかなることもあって、婦人科を受診していませんでした。もう閉経も近づいているのかなぁ、という気持ちもあったのが正直なところです」

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編集部

それは辛かったですね……。その後、何がきっかけで受診したんですか?

「そんな状態が続いて約半年後、会社の健康診断がきっかけです。健康診断の最後の問診で個室に入った途端に、担当の医師に『重い貧血状態です。すぐに病院に行ってください』と言われました。確かに朝起きるのが辛かったり、やる気が出ないなぁ、と思ったりすることが多かったのですが、仕事が忙しいからだろうと思っていました。すぐに内科を受診して血液検査をしたら『貧血でいつ倒れてもおかしくない数値だ』と告げられました。そこで初めて過多月経の症状を医師に相談し、婦人科を改めて受診するようにすすめられました」

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編集部

婦人科での診断結果はどういったものだったんでしょう?

「診断結果は、子宮筋腫による影響とのことでした。しかも『ぶどうのように子宮全体を筋腫が取り囲んでいる』と告げられました。再発なのか、前回の手術で取り切れなかったのかは不明ですが、大きい子宮筋腫がたくさんあって悪さをしている、と。『一度とったはずなのに、なんで?』という思いが強かったです。
不妊治療はもう再開する予定がなかったのもあって、子宮自体をとるか、お薬の服用で閉経状態(生理を止める)に持っていくかの選択肢を提示されました。結局、まずはお薬の服用で生理を止める方法を選び、その数年後、子宮自体をとる、という選択をしました」

経過観察=放置はNG。妊娠・出産を考えるなら、定期的に検査して!

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編集部

子宮筋腫発覚から子宮摘出まで、当時を振り返ってどうでしょう?

「定期的な婦人科検診の大切さを痛感しています。特に30代に入ったら、とにかく、まずは婦人科検診を受けてほしいです。何もなければ安心。なにかあったとしても“経過観察=放置”はイコールではない、ということを実体験から強く思います。

30代以上の妊娠・出産が増えてきている時代だからこそ『いつかは子供が欲しい』となんとなく思っている人も多いと思います。私もそうでした。そんなとき、子宮筋腫を代表とした、自覚症状がないからといって定期的な検査をおざなりにしている人も多いはず。
人生設計の中で妊娠や出産を少しでも考えているなら、後悔しないためにも計画的に、そして定期的に婦人科検診を受けてほしいです。
もしも自然妊娠したとしても、子宮筋腫の有無・大きさによっては早産や流産のリスクがあります。不要な心配をしないためにも、定期的な経過観察と、できることなら計画的に治療していくことが大切なんだな、と経験を通して思いますね。

また、少しでも違和感を持ったら、すぐに検査に行ってほしいです。子宮筋腫の影響で生理が辛くなったとき『なんでもっと早く行かなかったのだろう』と後悔しました。婦人科を受診するのってハードルが高い気がするものかもしれませんが、早く受診することで辛い時期をもっと早く解決できただろうな、と心底思います。
そんな後悔を、私より下の世代の女性にしてほしくないです。ぜひみなさんには定期的な検診と、婦人科受診をおすすめしたいですね」

産婦人科コメント

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山田光泰先生

子宮頸がん検診については、2年に1回の受検が国から推奨され、自治体からも無料クーポンが配布されています。しかしながら、その他の婦人科系の疾患については、ご自身で自発的に検査を受けに行かないと見つけづらいのが現状です。例えば子宮筋腫は、症状がなくても妊娠に影響を及ぼす可能性のある病気の一つで、マホさんが仰るとおり、将来的に妊娠と出産を考えているのならば、症状がなくても定期的なチェックをおすすめします。ご自身の健康と将来設計のためにも、誕生日などの節目をめどに、定期的に婦人科検診を受けるようにしましょう。

自発的に検診に行くことが、未来の自分につながる

目標や未来を見つめるオフィスで働くカッコい
子宮摘出という、大きな決断を選択したマホさん。「自分のような後悔をする人が少しでも少なくなれば」という思いでインタビューを快く受けてくれました。
今後の人生設計、特に妊娠・出産を“なんとなく”でも希望している人にとって、定期的な婦人科検診受診は、人生設計に大きく影響する行動となります。日頃から自分の体と向き合うこと、定期検診の大切さを、いま一度改めて考えることが大切なのかもしれません。

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