<インタビュー> 30歳。はじめての子宮頸がん検診で「高度異形成」が判明した

30歳で初めての子宮頸がん検診を受けて「高度異形成(子宮頸がんの一歩手前)」が見つかったメグミさん。20歳を迎えると、定期的に各自治体から子宮頸がん検診の無料クーポンが配られますが、実際に定期的に子宮頸がん検診を受けているのは、30代でも約半数ほどです。「自分は大丈夫、とは絶対に思って欲しくない」と語るメグミさんに、初めての検診、検査結果を知らされたときの率直な気持ち、そして手術について詳しくお伺いしました。

子宮頸がん検診には前向きだった

ピアスを着ける女性

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編集部

もともと子宮頸がんや定期検診については知っていましたか?

「子宮頸がんについては詳しくは知りませんでした。ただ、母からも『30歳からは定期的に検診に行ってね』と言われていたのもあって30歳になったら子宮頸がん検診には行くものという認識は持っていました

28歳で会社員を辞めて上京したこともあって、健康診断から数年遠ざかりました。2年後には無料クーポンで検診が受けられることも分かっていたので、わざわざお金を払ってまでは検診を受けようとは思っていなかったです」*

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編集部

30歳を迎えて「子宮頸がん検診の無料クーポン」がお手元に届いたときはどんな気持ちでしたか?

「20代後半から健康のことも考え始めていたので、ついにタダで受けられるぞ!と意気込んですぐに検診を申し込みました(笑)。それまで一度も婦人科を受診したことがなかったですし、ここぞとばかりに乳がん検診も一緒に申し込みました。受診したクリニックはとても清潔感があり、妊婦さんや赤ちゃんがたくさんいる空間というのも初めて。ワクワクしながら、安心して検診を受けることができました」

*厚生労働省は、平成17年より子宮頸がん無料クーポンの配布対象年齢を30歳から引き下げ、現在は20歳・25歳・30歳・35歳・40歳に変更されています。

検査結果を聞いて「もう、子供が産めないと思った」

膝を抱える女性

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編集部

検査結果を聞いたときは、どんな状況・思いでしたか?

「検査から1カ月後、検査結果を聞きに行きました。診察室に入った瞬間、先生の机の上に資料がいくつか置いてあるのを見て、なんとなく『これは何かあるな』と思いました。

『細胞異常があります。高度異形成、子宮頸がんの一歩手前まで進行している可能性があります』……たぶんそんなことを言われた気がします。正直、先生の説明していた内容は詳しく覚えていないんです。

子宮頸がんやHPVについて、当時はまったくと言っていいほど知らなかったので『もう私は妊娠も出産もできないんだ』と頭が真っ白になりました**。

思い描いていた自分の未来には『結婚』と『出産』が当たり前のようにあったので、その衝撃を受け入れることができませんでした。思い返せば、先生は資料を使いながら丁寧に説明してくれていたはずなんですが……。初めて聞く専門用語ばかりだし、頭は働いてないしで、冷静に話を聞くなんて難しい状況でした。

その日は『まだ確定したわけではないので、大学病院で精密検査を受けてください』となり、紹介状を書いて精密検査を受けることになりました。

大学病院での検査結果を聞くまでは、怖くてネットでも詳細を調べられなくて。『確定ではない』という言葉に、まだ希望を持っていたのかもしれません」

**異形成・子宮頸がんが進行しても、必ずしも妊娠や出産が不可能になるわけではありません。

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編集部

それは不安な日々でしたね…。相談できる人はいなかったのでしょうか?

30歳だった当時、私のまわりには子宮頸がんや異形成、それによる手術を経験した人は皆無でした。そもそもHPVや子宮頸がんについて真剣に友人と話す機会もなかったですし、心配をかけたくなくて親にも伝えられませんでした。

結局、大学病院での精密検査の結果は『CIN3』で、子宮頸がんの一歩手前レベルまで進行している可能性があることが分かりました。『レベルは下がる可能性はあるけれど』と前置きはされましたが、医師からは手術をすすめられました」

背中を教えてくれたのは、SNSの体験談

一本道を走る小学生の後姿

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編集部

突然手術をすすめられても、すぐには受け入れられないですよね。

「その日の病院からの帰り道、立ち寄ったカフェで一人で涙したのを覚えています。『なんでもっと早く検査しなかったんだろう』、『健康体と信じていた私がなんで?』と後悔と疑問ばかりがグルグルしていました。初めての婦人科で妊婦や赤ん坊の姿をあんなにワクワクして見守っていた自分を思い出したり、街中を歩く子供を見るだけで涙が溢れてきました。

その日から、初めて病気のことを詳しく調べ始めました。子宮頸がん、HPV、手術の種類、それぞれのリスク……。少しずつ学び、自分の中で消化していきました。そこで初めて、まだ妊娠や出産の可能性はあるんだ!ということも知りました

そんな不安な気持ちを動かしてくれたのは、SNSでした。同じ経験をしている人がリアルな体験談を発信していて、さらにポジティブなものが多く、救われました。SNSで『#高度異形成』というハッシュタグがあることも初めて知ったのもこのときです(笑)。体験談に触れることの大切さを実感しました」

手術を受けても、不安は消えなかった

ベッドから窓の外を見つめる女性

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編集部

実際に手術を受けようと決意した理由はなんだったんでしょうか?

「検査結果を知ったときは、かなり追い詰められていたのですが、病気を理解していくことで変わっていきました。それに、もしもこの先母親になる希望があるなら、がん発症の不安要因を残しておくのは、自分にとっても将来の子供にとってもプラスにはならないと思ったからです。

病院からの資料、自分でじっくり調べたこと、SNSでの体験者の姿、さまざまなリスクや可能性を鑑みて、私は『子宮頸部円すい切除術***』という手術を受けることに決めました。

手術日が決まって、初めて親に報告をしました。将来、妊娠や出産の際にリスクが高まるということは、結局言えなかったです。

手術自体は、1時間以内で終わる手術でした。目が覚めたときは、安心したとかほっとしたとかではなく『あぁ、子宮頸部を切ってしまったかぁ』という切なさがあったのが素直な感想です。妊娠・出産リスクに対する不安は、今後いつまでもつきまとうと思います」

***子宮頸部円すい切除術…子宮頸部を円すい状に切り取る手術のこと。摘出した組織を顕微鏡で詳しく調べ、正確な組織の結果と、どこまで異常な組織が拡がっているかどうかが判明します。

「決して他人事じゃない」を伝えていきたい

笑顔の女性

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編集部

手術から4年が経ちましたが、当時を振り返ってどうですか?

「結局、摘出した組織はがんではなかったこと、そしてこの手術で異形成組織を完全に取り切れたこともあって、今は定期的に検診に行くだけで済んでいます。不安が全くないとは言えませんが、この4年で手術後のショックや不安を少しずつ消化し、今は『手術をしてよかった』と胸を張って言えます。

当時の孤独感や焦燥感、不安でいっぱいだった頃は、本当に辛い時間でした。『私と同じ思いをしてほしくない』『健康体だと思っていた私が経験したのだから、決して他人事じゃない』という思いがあって、今は同世代以下の友人には自分の経験や婦人科検診について話すこともよくあります。あとは、同世代に意外とHPVワクチンの存在を知らない人もいるので、その話をすることも。

私の場合は、すでに異形成がかなり進行してしまっていたので衝撃や戸惑いが大きかったのですが、もっと早く検査をして、病気への知識を少しでも持っていれば、心持ちもかなり違っただろうと思います。当時、まったく入ってこなかった先生の話も、もう少し冷静に聞けたかもしれません。

最近、異形成の経過観察だった友人の一人が、高度異形成になって手術を受けることになりました。私の経験も話していたので、病気や手術のこと、そしてメンタルの部分でも彼女を少なからずサポートできてたらうれしいです。

異形成や子宮頸がんには、年齢は関係ありません。知らないうちに進行していることを自分の身を持って経験したからこそ、定期検診の大切さや病気の知識がもっと世の中に広まるといいな、と思います」

産婦人科コメント

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山田光泰先生

若年層にHPVワクチンの接種が積極的に推奨されたのは2010年代前半。世代によってはワクチンの重要性や存在について十分な情報提供がなされていないのが現状です。異形成や子宮頸がんは、ワクチン接種で予防できるものなので、若い世代の人にはぜひ接種してほしいですね。
また、メグミさんのように、高度異形成や子宮頸がんを経験した方のお話は、なかなかオープンにならないためとても貴重に思います。無料クーポンの利用はもちろんですが、20歳を超えたら、すすんで定期検診を受けることが大切です。今はワンコイン(500円)で子宮頸がん検診を受けられる医療機関も多いので、ぜひご自身の自治体でも調べてみてください。

検査キットを使えば、自宅でHPV検査ができる

子宮頸がんの予防には、子宮頸がん検診だけでなく、ハイリスク型HPVに感染しているかを調べるHPV検査の2つの検査を併用するのが安心です。HPV検査には、検査キットを使って手軽に自宅で&ご自身でできるものもあります。今のご自身のHPV感染の有無を確認するためにも、ぜひ試してみてください。

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