低用量ピルに期待できる5つの効果。種類ごとの特徴と気になる副作用も紹介
ピルはつらい生理痛やPMS(月経前症候群)の緩和、避妊などの効果を発揮してくれる、女性の強い味方です。一口にピルと言っても、中用量・低用量・超低用量など種類があり、それぞれ特徴や効果は異なります。今回はピルの種類を始め、一般的に処方されることの多い低用量ピルに期待できる効果と、知っておきたい副作用を紹介します。
- 監修医師
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山田光泰先生産婦人科専門医。大学病院等で不妊治療を中心とした最先端の医療に従事しつつ、厚生労働医系技官として母子保健施策の推進にも携わってきた。現在は、女性のライフステージに応じたウェルネス向上をサポートすべく、テクノロジーを活用した課題解決にも取り組む。
そもそもピルってどんなもの?
ピル(pill)とは錠剤という意味ですが、経口避妊薬を指す言葉として一般的に使われています。ピルはドラッグストアなどで販売されている市販薬ではなく、医療機関で処方してもらう薬です。まずはピルがどんな薬なのか、そして主な種類を紹介します。ピルは女性ホルモンが含まれた薬
ピルとは、生理や排卵の周期をコントロールしている女性ホルモンが含まれた薬のこと。女性ホルモンは主に「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の2つで、ともに生理周期に応じて増減します。ピルを飲むと女性ホルモンの分泌量が調整されるため、避妊効果・PMSの改善・生理痛の軽減といった作用が発揮されます。
ピルの種類は主に4つ
ピルは含まれる成分や割合によって数種類に分けられ、それぞれ期待できる効果が異なります。一般的に処方されるのは、超低用量ピル・低用量ピル・中用量ピル・アフターピルの4種類。このうち、アフターピル、中用量ピル以外は基本的に継続した服用を行います。
ちなみに、各ピルの「用量」はエストロゲンの量を示したもので、中用量ピル>低用量ピル>超低用量ピルの順で多く含まれています。低用量ピルは中用量ピルよりも、超低用量ピルは低用量ピルよりも含まれるホルモンの量を少なくし、副作用を軽減するために開発されました。
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成分 効果 代表的な製品 超低用量ピル エストロゲン超低用量
+プロゲステロン避妊効果、PMS、生理痛改善、
月経量改善、ニキビ改善などルナペルULD(フリウェルULD)、
ヤーズフレックス低用量ピル エストロゲン低用量
+プロゲステロン避妊効果、PMS、生理痛改善、
月経量改善、ニキビ改善などマーベロン(ファボワール)、
トリキュラー(アンジュ・ラベルフィーユ)中用量ピル エストロゲン中用量
+プロゲステロン月経移動など プラノバール アフターピル プロゲステロンのみ 緊急避妊 ノルレボ、エラワン 低用量ピルは主に4種類
低用量ピルは「経口避妊薬」や「OC(Oral Contraceptivesの略)」と呼ばれることもあります。医学の進歩とともに新しいものが開発されていて、開発された順に第一世代・第二世代・第三世代・第四世代と分類されます。使用されているプロゲステロンの種類や、特化した効用は世代によって異なります。
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世代 使用されているプロゲステロン 主なピルの名称 特化した効用、特徴 第一世代 ノルエチステロン シンフェーズ
フリウェルLD/ULD
ルナベルLD/ULD肌荒れの改善に期待できる 第二世代 レボノルゲストレル トリキュラー
アンジュ
ジェミーナ
ラベルフィーユ不正出血が起こりづらい
ホルモン変化が自然な生理周期と近い第三世代 デソゲストレル マーベロン
ファボワール男性ホルモンの抑制効果が高い
ニキビや多毛症の改善に期待できる第四世代 ドロスピレノン ヤーズ
ヤーズフレックスむくみが少ない
むくみによる体重増加も抑えられるこのように、ピルにはさまざまな種類がありますが、その人に合ったものを医師が処方してくれるので安心してくださいね。
低用量ピルに期待できる5つの効果
生理移動や緊急避妊など、一時的な悩みに効果が期待される中用量ピルやアフターピルと違い、低用量ピルは避妊や生理にまつわる多くの悩み、そして疾患リスクの減少にも効果を発揮します。ここからは、低用量ピル(以降「ピル」記載に統一)に期待できる主な効果5つを詳しく紹介します。1. 避妊効果
ピルは女性ができる避妊方法の一つです。飲むとエストロゲンとプロゲステロンの分泌量が減少し、卵胞の発育・排卵が抑制されることで避妊効果を発揮します。ある研究データによると、ピルを正しく服用した場合は99.7%、飲み忘れなどを含めた使用方法でも92%の避妊効果があるという結果が出ています(※1) 。
最低7日間は飲み忘れないことを前提として、生理が始まった日から5日目までの間にピルを飲み始めれば、服用を始めたその日から避妊効果が得られると言われています(※2)。
2. PMSや生理に関わる悩みの改善
ピルによって女性ホルモン分泌量の変動が抑えられると、生理前後における不調の改善が期待できます。
<ピルによって期待できる効果>
・生理痛の緩和
・生理不順の改善
・過多月経の改善
・生理前の不快な症状であるPMSの改善
・PMSのうち特に心の症状悪化がメインであるPMDD(月経前不快気分障害)の改善 など3. 子宮内膜症の予防と軽減
子宮内膜症とは、子宮内膜の組織が子宮の内側以外の場所で発生し、増加する病気です。主な症状は、強い生理痛・腰痛・下腹部痛・排便痛・性交痛・不妊など。子宮内膜症を発症するのは20~30代の女性が多く、ピークは30~34歳とされます。ピルによって排卵が抑制されることで、症状の軽減・予防につながります。鎮痛剤を処方されても痛みが改善されない場合に、ピルが処方されることが多いです。
4. 婦人科系がん発症リスクの低下
ピルを飲むと卵巣がんや子宮体がんのリスクを低減できることがわかっています(※3) 。
卵巣がんは、毎月排卵を繰り返すことによるダメージの蓄積が原因になるとも言われています。ピルを定期的に服用すると不必要な排卵が抑えられ、卵巣を休ませることができます。これにより、卵巣がんの発症リスクが下がると言われています。
次に、子宮体がん(もしくは、その前段階の子宮内膜増殖症)の原因として考えられているのは、エストロゲンの過剰分泌による子宮内膜の増殖です。定期的にピルを服用してエストロゲンの分泌量をコントロールすることで、子宮体がん・子宮内増殖症の発症リスクが下がると言われています。
5. 肌荒れの改善
生理前後に起こりやすい肌荒れには、女性ホルモンが関係しています。ピルを飲んでいない場合は、排卵の数日後からプロゲステロンの分泌量が急激に増加します。プロゲステロンには皮脂の分泌を促進する作用があるため、過剰に分泌された皮脂が毛穴を閉塞させることでニキビなどの肌荒れを引き起こすのです。一方、生理中は保湿効果を持つエストロゲンが減少することで肌が乾燥し、肌荒れしやすくなります。ピルを飲むとこれらのホルモンバランスが整うため、肌荒れの改善に期待できます。
知っておきたい、ピルの副作用
ピルにはたくさんの効果がある一方で、知っておきたい副作用もあります。一時的、もしくは軽度なことが多いですが、まれに深刻な影響を与えるものもあるため、ピルを飲む前にしっかりと副作用のことも知っておくことで心構えもできるはず。ただし、副作用はすべての人に起こるわけではありません。まったく影響がない人も多く、これには個人差があります。副作用1. 一時的な副作用の発生
ピルを飲み始めてから起こる軽度な副作用のほとんどは一時的なもので、ピルを飲み続けると治まることが多いです。
<主なマイナートラブル>
・胸のハリ、痛み
・吐き気
・頭痛
・不正出血
・下腹部痛
・下痢
・むくみピルを飲み始めて2~3カ月ほど経ってもこれらの症状が治まらない場合は、医師に相談しましょう。ピルの種類を変える、痛みを抑える薬が処方されるなど、適切な判断をしてもらえます。
▼低用量ピルのマーベロン系/トリキュラー系で出やすい副作用はこちらの記事で詳しく解説しています。
マーベロン系、トリキュラー系で違う?【低用量ピルの種類別】副作用と対処法をチェック!副作用2. 血栓症のリスク
ピルの重大なリスクとして、血栓症が起こる可能性があります。血栓症とは、何らかの原因で血栓(血のかたまり)ができて、血管をふさいでしまう病気です。しかし、実際に血栓症を発症する確率はかなり低く、過度に心配する必要はありません。
◆血栓症によって起こる主な病気
・エコノミークラス症候群
・心筋梗塞
・脳梗塞◆血栓症の初期症状
・足の腫れ、痛み、赤み
・激しい腹痛
・激しい胸痛、息苦しさ
・激しい頭痛
・視界が悪くなる などピル非服用者で、血栓症の一種である静脈血栓塞栓症を発症するのは、年間で1万人中1~5人程度です。一方、ピル服用者の発症数は年間で1万人中3~9人程度です。
参考までに、妊婦は1万人中約5~20人、出産後12週間まででは1万人中約40~65人が発症するというデータもあります。つまり、妊娠中や出産後のリスクに比べれば、ピル服用者の血栓症リスクはかなり低いということが分かります(※4) 。
ピルを正しく服用し、定期的に婦人科を受診すること、また血栓症が疑われる初期症状が出た時は速やかに医療機関を受診することを意識すれば、過度に怖がる必要はありません。
自分の悩みに効果が期待できるピルを処方してもらおう
避妊や生理痛・PMSの緩和など、さまざまな嬉しい効果を持つピル。中用量、低用量、そしてマーベロン系やトリキュラー系など、いろんな種類があります。ピルの種類によって期待できる効果は違うので、自分の悩みをしっかりと医師に伝えて処方してもらってくださいね。●ピルを服用することによって、本記事で挙げたトラブルの改善が期待されますが、効果・効能のあらわれ方には個人差があります。また、まれに副作用が起きる場合もあります。医師の診察をうけ、指示された適切な服用方法をお守りください。
参考文献
※1 J. Trussell, “Choosing a contraceptive: efficacy, safety, and personal considerations,” in Contraceptive Technology, R. A. Hatcher, J. Trussell, A. L. Nelson, W. Cates Jr., F. H. Stewart, and D. Kowal, Eds., Ardent Media, New York, NY, USA, 19th edition, 2008.
※2 日本産婦人科学会編 OC・LEPガイドライン 2020年度版
※3 日本産婦人科学会「低用量ピルの副作用について心配しておられる女性へ」
※4 公益社団法人 日本産科婦人科学会 「低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲストーゲン配合剤 ガイドライン」