30代以上なら知っておきたい「乳がん」のこと。痛みは? 初期症状は?

乳がんは胸の乳腺の組織にできる悪性の腫瘍(しゅよう)のことです。日本では毎年男女あわせて9万人以上が乳がんと診断されており、生涯で乳がんに罹患(りかん)する確率は約9人に1人と言われています(※1)。特に30代からは発症のリスクが20代に比べてグッと上がります。だからこそ、30代以上の女性は、乳がんの基礎知識をしっかりと身につけておくことが大切。本記事では、乳がんの基礎知識、初期症状を紹介します。

監修医師
明神真由先生
明神真由先生
高知県出身。外科修練後、大学病院で乳がんの診断・治療を専門に10年以上勤務。「すべての患者様の希望に添える医療の提供」をモットーに、日々手術・外来診療に携わっている。

乳がんとは乳腺にできるがん

乳がんの説明
乳がんとは「乳腺」に発生する悪性腫瘍(しゅよう)のことです。乳腺とは、母乳を作る「小葉(しょうよう)」という組織と、その母乳を乳頭まで運ぶ「乳管」の2つの総称です。乳房とその周辺には多くのリンパ節があるため、乳がんが進行すると、がん細胞がリンパ節を通して全身(リンパ節、骨、肺、肝臓など)に転移することがあります。

乳がんは予防できない

乳がんはなぜ発生するのか? その原因はいまだ医学的に解明されていません。女性ホルモンであるエストロゲンが大きく関係しているとされていますが、これも明確には証明されていません。つまり、乳がんは予防することができません。ここ30年で若年層も乳がんにかかる確率が上がってきており(※2)、これは初潮の若年化、食生活やライフスタイルの変化が影響していると考えられています。また、統計から見ると遺伝による影響も大きいがんの1つと言われているため、​​特に母方の血縁者に乳がんや卵巣がんになった人がいる場合は、年齢に関係なく、早いうちから定期検診を受診しましょう

乳がんの発生率は、30代からグンと上がる

年齢階級別罹患率

一般的に「乳がんは40代以上の女性が注意すべき」と言われています。事実、上のデータからも分かるように、乳がんにかかる人のほとんどは40代以上で、国は40代以上の女性に対して2年に1回の検診を推奨しています。毎年、男女あわせて全国で約9万人以上が乳がんを罹患し、生涯で乳がんに罹患する確率は約9人に1人と言われています(※1)

「30代はまだ大丈夫!」と思っている人も多いかと思いますが、先述したように、ここ30年で乳がん発症の年齢も若年化しています。また、グラフからも分かるように、20代にくらべて30代、特に30代後半から乳がんにかかるリスクはグンと上がります。乳がんは初期治療が大切です。ライフイベントやキャリア変化など多忙になりがちな30代こそ、意識的に乳房の定期的なセルフチェック・検診をしましょう!

初期の乳がんは、痛みなど自覚症状がほとんど見られない

セルフチェックをする女性
乳がんは体調不良になったり、痛みが伴ったりといった初期症状がほとんどないため、発見されづらく、知らないうちに進行してしまいます。だからこそ、定期的なセルフチェックや検診は大切! 初期は「しこり」の発見がキーです。乳がんに発症者の多くに、この「しこり」が発生すると言われています。ただし、この「しこり」は初期段階では2cm以下と小さいものがほとんどなので、日常から乳房の変化をしっかりとセルフチェック&自己観察する必要があります。

▼セルフチェックの方法はこちらの記事をチェック
お風呂で3分「乳がん」セルフチェック! タイミングやポイントも紹介

セルフチェックで、下記のような異常が見られた場合、乳がんの疑いがあります。1つでも当てはまったら乳腺科/乳腺外科を受診しましょう。

✔ 乳房にコリコリとしたしこりがある
✔ 脇の下にグリグリとしたしこりがある
✔ 腕を上げたときに乳房にひきつれ、もしくは皮膚のくぼみがある
✔ 乳頭から分泌物が出る (血性)
✔ 乳頭が陥没したり、ただれや変形がある
✔ 乳房が赤く腫れたり、オレンジの皮のように毛穴が目立つ

<乳房に痛みがあるときは?>
乳房の痛みは、そのほとんどがホルモンバランスによるものです。そのため、一時的な痛みは心配しすぎることはありません。継続的に痛みが出る場合は、乳腺科/乳腺外科を受診しましょう。

乳がんは早期発見で9割以上は治る!

乳がんは、早期発見が重要です。なぜなら、早期発見・適切な治療を受ければ、9割以上の人が治る病気だからです。しこりが小さく、リンパ節への転移がなければ、約90%の人が10年生存している、つまりほぼ治るという結果が出ています(※3)

治療方法は、薬物治療や放射線治療、手術など複数の治療法を組み合わせて行いますが、「乳がんになったら、手術で乳房をすべてとる」という以前のイメージとは大きく変わってきていて、乳房の一部のみを摘出する、というケースも多々あります。また、現在は手術で乳房の一部を摘出(もしくは全摘出)しても、乳房の形態を取り戻す治療(再建手術)も保険適用となっています。

「まだ大丈夫」は禁物! 30代から自分の胸と向き合おう

女性の胸元
乳がんは、決して40代以上の人だけが気をつけるべき病気ではありません。「30代は、乳がんについてしっかり意識しなくてはならない年代なんだ」ということを日頃から忘れないようにしましょう。予防ができず、さらに初期治療が大切な病気だからこそ、しっかりと自分の胸を定期的にチェックして小さな変化も見逃さないことが大切! その第一歩として、30代になったら、まずは乳腺科/乳腺外科で「乳がん検診」を受けることをおすすめします。

参考文献
※1 国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」データ(2018年)
※2 日本乳癌学会 乳癌診療ガイドライン 疫学・予防項目
※3 公益財団法人がん研究振興財団「がんの統計 2022」、日本医師会サイト「知っておきたい がん検診」

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