【防災士に聞く】女性だからこそ備えておくべき“防災アイテム”とは? 

10月13日は「国際防災デー」。みなさんは「まさか」のときのための防災アイテムは用意していますか? 今回は、東日本大震災、熊本地震、熊本豪雨と、3度の大災害を経験した防災士・柳原志保さんに、“避難時の防災アイテム”を、経験者ならではの目線で教えてもらいました。女性特有の悩み軸でお伺いしたので、ご自身の防災アイテムに含まれているかどうか、ぜひ確認してみてくださいね。

教えてくれたのは…
柳原志保(しほママ)さん
柳原志保(しほママ)さん
防災・安心プランナー。1972年宮城県多賀城市生まれ。熊本県和水町在住のシングルマザー。東日本大震災で自宅が大規模半壊し避難所生活を送る。翌年熊本へ移住し防災士の資格を取得後、2016年熊本地震、2020年熊本豪雨を経験。「歌う防災士しほママ」の愛称で、3度の大災害の教訓を歌や体操など交えて元気に伝える講演活動をはじめ、防災グッズ、イベントなどの企画や監修、メディア出演など幅広い防災啓発活動を行っている。

防災アイテムを揃える前に知っておくべきこと3

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防災アイテムを揃える前に、私自身が被災を経験したからこそ、改めて知っておいてほしいこと・意識しておいてほしいことが3つあります。

1. 被災してから調べる、では遅い! 事前の知識が重要

万が一が起きてからでは、電気もインターネットも使えず、もちろんネット検索もできません。知っておくべき知識は「いつかでいいや」と思わず、日常的に調べるクセを付けて知っておくことで、いざというときにしっかりと自分の心身と命を守ることができます。

2. 避難所に行っても物資は十分ではない

避難所に行けば何かをもらえたり、いろいろと助けてもらえると思っている方もいるかと思いますが、残念ながら何もないことが前提だと思ってほしいです。避難所とはいえ快適とは限りませんし、実際私も困ることだらけでした。もらえなくて当たり前、自分のものは自分で準備、が基本だという意識が大切だと思います。

3. 特別なものを揃える必要はない

防災のためだけに、特別なものを買っておくのは経済的に負担ですし、正直めんどくさいですよね……。いろいろとプラスで買わなきゃ!と思わなくても大丈夫。日常生活で使うものの中で避難時にも役立つアイテムは少し多めに防災バッグにストックしてそこから使い、使った分を買い足す「ローリングストック」がおすすめです。無理をしない程度に備えておきましょう。

女性ならではの「生理・トイレ」関連アイテム

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2011年3月11日、東日本大震災で自宅が大規模半壊し、初めて被災にあいました。当時の私は防災士の資格もなく、何の備えもしていなかったゆえに苦しい思いを体験しました。以下はその際の経験から、女性にはぜひ準備しておいてほしい「生理・トイレ」関連のアイテム一覧です。特にこれは大切!と思ったものを、私の経験も含めて詳しく紹介していきます。


女性の整理まわり防災愛グッズ

□ 携帯トイレ:目隠しができるポンチョ型など
□ 生理用品:生理1周期分あると安心
□ 防臭効果のある汚物入れ:中が見えない不透明なものが◎
□ 鎮痛剤:生理痛がある人は用意必須
□ 携帯用ビデ:必須ではないがあると便利

【携帯トイレ】避難所で一番困ったのはトイレ

基本的に水がきていないので、トイレが排せつ物であふれてしまい、汚いし臭いし不衛生でした。においは室内まで充満してきて本当につらい思いをしました。男性だったら外で用を足すことも可能かもしれませんが、女性はそう簡単にはいきません。仮設トイレが設置されるまでは、本当にトイレに行くたびに嫌な思いをしていました。そんなストレスから少しでも回避できるよう、水が使えなくても出来る携帯トイレを持っておくと安心です。

【生理用品】支給は一人1個!?

避難所に物資が届いたのは震災の3日目。その際は食べ物や飲み物は配られても、生活必需品はかなり後でした。しかも私が被災した際、支給された生理用品は一人につき1個。これでは全然足りませんし、配布したのは男性だったので人によってはほしくても言い出せなかった人もいたと思います。私自身は被災時にはちょうど生理ではなかったのですが、何も持って行かなかったあのときの状況で「もし生理だったら」と考えると、本当に怖いです。また支給された場合も、通常時と違うものを使うとストレスの要因にもなりますので、ご自身がいつも使っている生理用品を最低1周期分は用意しておくのが安心。

量の多い方はタンポンも併用すると◎
特に普段から経血量が多い人は、タンポンがおすすめ。サイズも小さくて荷物にならないですし、漏れも気になりにくく長時間取り替えられない場合も、かぶれたりせず安心です。トイレが汚くてあまり行きたくなかった思い出から、トイレに行く回数を減らせるアイテムなので、私にとっては必須です。

防臭効果のある【汚物入れ】で気になる臭いをシャットアウト

お風呂に入れない状態で、さらに生理中だと特に気になってくるのが臭いの問題。おすすめは、100均などでも売っている、しっかり防臭してくれる汚物入れ。中の見えない不透明もの・密閉できるものを選ぶといいと思います。袋の中には、使用済のトイレットペーパーやナプキン、タンポン等の生理用品だけでなく、オムツも入りますので、お子様連れの方も安心。

女性は「身を守ること」を意識したアイテムの準備も大切

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災害時は混乱に乗じて、セキュリティが十分働かなくなることも多く、窃盗や性犯罪などさまざまな犯罪が発生する可能性も否定できません。このような犯罪に巻き込まれないためにも、避難する際には自分の身を守る防犯アイテムもあわせて準備しておくことが大切です。


ヘッドライトと笛

□ ホイッスルや防犯ブザー
□ ヘッドライト

大事なのは「私は犯罪に備えています」という意思表示

自分の身を守るためには、犯罪をさせないための工夫も大事になります。例えば、防犯用のホイッスルやブザー、ヘッドライトなどをわざと見える所に置いたり身に付けたりしておくと、しっかり備えているという意思表示になるのでおすすめ。

わざわざ防犯対策やセキュリティをしっかりとしている人は狙わないですよね。無防備感を出さないよう、外から見えるように「私はすごく備えてますよ!」とアピールするといいと思います。

私は、ライトは懐中電灯よりもヘッドライト派!両手が使える安心感もあり、夜道を通る時などに使えるので、ひとつ持っておくと安心です。防犯ブザーやホイッスルは、軽量小型で持ち運びやすく、百均などで手軽に購入できますよ。

不安な思いがあれば、運営側に声を上げても大丈夫
避難所の運営に男性が多い場合や、迷惑をかけたくないという思いから、災害時の避難生活に不安があっても「こんな状況ではなかなか言いにくい」と躊躇してしまうことも。でもそこは少し勇気を出して、安心安全に過ごせるよう、性犯罪防止に関しての啓発ポスターを貼ってもらう、女性や子ども専用スペースを確保してもらうなど、できる範囲で働きかけて大丈夫です。周りの女性と一緒にでもいいので『SOS』を発信することが、犯罪抑止や自分を守ることに繋がります。

忘れないで。自分の「心を守る」アイテム

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被災時は、どのくらいの期間を避難所で過ごすことになるかはわかりません。長期化するとストレスが溜まる可能性も高いので、避難所であってもいかにリラックスできるかも大事。例えば私の場合、カップ付きのインナーなどの体に負担がなくリラックスできる衣類を身に着けることが心を守ることに繋がりました。ここでは、プライバシーを守れるもの、リラックスにつながるようなアイテム例を紹介しますので、ご自身に合うアイテムをぜひ探してみてください。


ファン、アロマ

<アイテム例>
□体に負担のない下着(カップ付きインナーなど)やリラックスできる服
□暑さ寒さ対策(小型扇風機、うちわ/使い捨てカイロ、保温アルミシート)
□耳栓、イヤホン
□ワンタッチテント
□アロマスプレー、良い香りの消臭剤
□好きなお菓子や食べ物、飲み物

生きてくうえで必要な物+αがあることで心が落ち着く

日ごろから好きな食べ物や飲み物、お気に入りのアロマや消臭剤など、心を元気にしてくれる日常使いのアイテムをプラスで持って行くことが、非常時にはとても大事だなと実感しています。
被災時はどうしても不安でいっぱいになり、心が壊れてしまいそうになるときもあります。そんなときは、好きなアイテムで「ふぅー」と一息つける瞬間があると全然気持ちが違うんですよね。あなたにとって、何があったら元気になれるか?をぜひ考え、防災バッグに忍ばせておいてくださいね。

あると快適!な便利アイテム

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3回の災害経験を通して、持っていると便利だな、と思ったアイテムも紹介します。マストではないですが、防災バッグのスペースに余裕があるならストックを検討してみるのもいいと思います!


□ おしりふき、ウェットシート
水がないと、体を洗うこともままならないです。おしりふきやウェットシートを多めに持っていれば、体を拭くのはもちろんデリケートゾーンが気になったときも清潔に保つことができますよ。また、急な被災でメイクをしていた場合、メイク落としとしても使えます。乾いていないか、定期的なストックの見直しも忘れずに。

□ パンティライナー(おりものシート)、吸水パット
洗濯はできない前提だからこそ、下着をたくさん用意しておくよりも、パンティライナーや吸水パットをいくつか入れておくと安心です。

□ マスク
感染症予防につながるだけでなく、避難所はトイレなど臭いや衛生面で不安な場面もあるのでマスクは数枚用意しておきましょう。被災しているといっても「すっぴん」を見られることに抵抗がある人にとっても味方になるはず。

女性だからこその視点で、今一度防災対策を

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防災グッズを準備している人も、していない人も、これを機会にぜひ、女性ならではの「生理・トイレ」アイテムや、「身を守る」アイテムを用意しているか改めて防災グッズを見直してほしいと思います。
防災の大事さはみんなわかっているはず。でも「いつかやろう」と思って後回しにしていると、結局困るのは自分です。「やっておけばよかった」と後悔しないために、できることからはじめてみませんか? 普段使っている生理用品を少し多めにストックしておくなど、ムリなくそれぞれの形で備えを続けてほしいですね。

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