妊娠中のセックスはいつまでOK?性感染症のリスクや赤ちゃんへの影響は?

約10ヵ月間の妊娠期間中に、パートナーと性行為をしても良いのかと悩む人は少なくないのではないでしょうか。赤ちゃんや自分の心身の状態、パートナーとの関係性など、悩みや不安があっても人には相談しにくいこともありますよね。そこで今回は妊娠中の性行為について、リスクや気を付けるポイントなどを紹介します。

教えてくれたのは…
山田光泰先生
山田光泰先生
産婦人科専門医。大学病院等で不妊治療を中心とした最先端の医療に従事しつつ、厚生労働医系技官として母子保健施策の推進にも携わってきた。現在は、女性のライフステージに応じたウェルネス向上をサポートすべく、テクノロジーを活用した課題解決にも取り組む。

妊娠中の性行為と赤ちゃんへの影響

妊娠した女性
妊娠中に性行為をしても良いのか、悩む人は多いようです。妊娠中の性行為は禁止されているわけではありませんが、妊婦や赤ちゃんへの影響を考え、気を付ける必要があることを知っておきましょう。

妊娠中の性行為は避けた方が無難

医学的には禁止されていませんが、妊娠中の性行為は基本的に避けた方が無難です。しかし妊娠期間は約10ヵ月と長いため、その間ずっと性行為を我慢するのは辛いと感じることもあるでしょう。ストレスや夫婦関係の問題につながる可能性もあり、とてもデリケートな問題でもあります。

1番大切なことは、妊婦と赤ちゃんの安全を優先すること。妊娠中の性行為は普段とは異なり気を付けるべきことがあることを、しっかりと理解しておきましょう。

赤ちゃんへの影響は状況によって異なる

妊娠中の性行為が赤ちゃんに与える影響については、さまざまな条件や要因によって異なるため、一概には言えません。

例えばお腹が張りやすい・子宮頸管長が短い・腟炎と診断されている、などの危険因子が特にない場合であれば、通常の性行為なら胎児に影響を与えない可能性が高いとされています。ただし、妊娠時期や性行為時の体位などによっては、妊娠経過に影響を与える可能性があるため、注意が必要です。

【妊娠時期別】性行為と考えられるリスク

二人でエコー写真を見る若い夫婦
妊娠中といっても、その時期によって妊婦の心身の状態は大きく異なるもの。そこで、妊娠時期別の母体の状態を交えながら、性行為によって起こり得るリスクについて解説します。

【妊娠中記(安定期)】の性行為で考えられるリスク

妊娠約5~7ヵ月頃を妊娠中期と呼びます。つわり症状が落ち着いてくるこの時期は安定期とも呼ばれ、母体の状態が比較的安定しています。そのため安定期に性行為を考える夫婦もいるでしょう。しかし安定期だからと言って赤ちゃんへの影響や性病感染、母体への影響など、さまざまなリスクがゼロであるというわけではありません。例えば以下のようなケースに当てはまる場合には、性行為を避けた方が良いでしょう。

<性行為を避けた方が良いケース>
●つわり症状が続いている
●体調が良くない
●お腹が張っている
●不正出血がある
●多胎(双子や三つ子の妊娠)の場合
●胎盤の位置に異常がある場合(前置胎盤など)
●医師より安静を指示されている場合

性行為をする場合には赤ちゃんや母体への影響を考えて、注意しながら行うことが大切です。妊娠中の性行為で気をつけたいポイントについては、後ほど詳しく紹介します。

【妊娠後期】の性行為で考えられるリスク

妊娠後期は妊娠約8~10ヵ月までを指し、分娩に備えて徐々に母体が変化してくる頃です。そのため子宮口や腟がやわらかくなり、これまで特に異常がなかった人でも出血しやすくなったり、破水や早産につながったりするリスクがあります。また赤ちゃんの成長によってお腹も大きくなるため、胃や肺が圧迫されて苦しくなり、性行為自体が不快に感じる場合も。

妊娠後期の性行為も禁止されているわけではありませんが、これらのリスクを考えると、控えた方が安心と言えるでしょう。

妊娠中の性行為で気を付けるポイント

微笑むカップル
妊娠中に性行為をする場合、母体への感染や負担などを予防するために気を付けたいポイントがあります。妊婦に負担をかけず、心地良いと思える性行為をするために、パートナーと一緒に気をつけてくださいね。

コンドームを必ずつける

オーラルセックスを含め、性行為時には必ずコンドームをつけましょう。妊娠中は全期間を通して母体の抵抗力が落ちているため、普段よりも性病に感染するリスクが高くなります。もしも性病感染が子宮内にまで及ぶと、早産を招く恐れも。また精液に含まれるプロスタグランジンという成分が、子宮収縮を起こしてしまう可能性もあるため、コンドームをつけて腟内射精は避けるようにしましょう。

お腹に負担のかからない体位を心がける

妊娠中は性行為の体勢によっても、お腹が圧迫されたり張りや出血につながってしまったりする場合があります。妊婦が負担にならないような体位を心がけ、深い挿入は避けましょう。お互いが心地良いと感じる体位を探してみるのも良いかもしれませんね。

乳首への刺激は控えめにする

妊娠すると、乳首は普段より敏感な状態となるため、痛みを感じやすくなります。また乳首を触ることで子宮収縮を引き起こし、お腹が張ってしまう場合もあるため、乳首への刺激は控えめにしましょう。

その他

さまざまな感染症予防のためにも、性行為の前にはシャワーを浴びるなど体を清潔にしたり、清潔な環境で性行為を行ったりすることも大切です。また腟内に傷がつき、そこから感染症を引き起こしてしまうリスクがあるため、膣内に指を入れることは避けた方が安心です。

妊娠中は性行為以外のスキンシップをすることも大切

自宅で笑顔でお腹をさする日本人夫婦
妊娠中は心身にさまざまな変化が起こるため、性欲の有無には個人差があります。これは妊娠している女性だけでなく、なかには赤ちゃんや母体を考えると怖くて性行為しづらいというパ―トナーも。そのため妊娠中は、性行為以外の方法で夫婦のスキンシップをとることも1つの方法です。例えばハグやキスをしたり、手をつないだりするのも良いでしょう。

性行為中には、幸せホルモンとも呼ばれるオキシトシンという物質が分泌され、パートナーへの愛情を増す働きをします。このオキシトシンは性行為のような肌のふれあいだけでなく、パートナーを思う温かな空気などによっても分泌されるため、お互いを思い合ってハグや手をつなぐこともおすすめです。

妊娠中の性行為はパートナーともよく話し合おう

出産を控えた夫婦
妊娠中の性行為は禁止されてはいませんが、リスクが伴うことを忘れないようにしましょう。性行為を行う際にはコンドームを必ずつけ、母体に負担がかからない体位を意識するなど、赤ちゃんと母体の安全を考慮して行ってくださいね。また性行為以外に、キスやハグといったスキンシップをすることでもパートナーへの愛情を高め、愛しいと感じられます。パートナーとよく話し合い、楽しい妊娠・夫婦生活を送ってくださいね。

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