トリコモナス症とはどんな性感染症? 意外な感染経路や予防法
トリコモナス症とは、性器の中にトリコモナスと呼ばれる原虫が入り、炎症が起きる感染症です。現在、世界で最も新規感染者の多い性感染症(STD)とされています(2016年調査時 ※1)。トリコモナス症は、主に性行為などにより感染するためSTDの1種とされていますが、実は性行為以外の経路で感染することもあります。本記事では、トリコモナス症について、その症状や感染経路、また予防法などについて紹介します。
- 監修医師
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陣内理子先生産婦人科専門医、医学博士。久留米大学(2011年)、順天堂大学大学院卒業。大学病院及び関連施設に従事し、2016年より2年間ヨーテボリ大学留学。一般婦人科、不妊治療、周産期、無痛分娩。
もしかしてトリコモナス症? 今すぐできる簡単チェックリスト
まずは、トリコモナス症の可能性があるのか、自分で簡単にできるセルフチェック項目を紹介します。気になる症状がある人や、早期発見のために知っておきたい人など、ぜひチェックしてみてくださいね。<チェックリスト>
女性 男性 おりものが黄緑色になり、魚が腐ったような生臭い臭いがする 陰茎から泡状の分泌物が出る 排尿時に痛み・違和感がある 最近、よくトイレに行きたくなる 陰部のかゆみ 【男女別】トリコモナス症の症状
トリコモナス症は男女共に感染しますが、女性の約半数、男性の70〜80%は無症状であるため、感染していても気づかない人も多いです。そのため感染に気づかないままパートナーと性行為をしたり、家族と普段通りの生活を送ったりすることで、他の人にもうつしてしまう可能性があります。これを防ぐためにも、トリコモナス症に感染したら、どのような症状が出るのか知っておきましょう。男性の症状
先述したように、男性の場合、トリコモナス症に感染していても症状が表れないことが多いです。症状が表れる場合は、尿道炎のような症状が出ることが多く、排尿時の軽い痛みや不快感を始め、陰茎から泡状の分泌物が出る場合もあります。また、なかには頻繁に尿意を感じる頻尿の症状が出る人も。女性に比べて、男性は比較的症状が軽い場合が多いようです。
女性の症状
女性がトリコモナス症に感染すると、主な症状として黄緑色をした生臭いおりものが出たり、腟周辺が赤く腫れたりします。また、性行為時に痛みを感じるケースや、男性の症状と同じように排尿時の痛みや不快感、頻尿なども起こる可能性もあります。
トリコモナス症を放置したときのリスク
トリコモナス症に気づかなかったり、受診や治療をせずに放置してしまったりすると、男性の場合は、尿道炎や前立腺炎をおこしてしまう可能性があります。女性の場合は、腟炎や尿道炎を起こす可能性があり、妊娠中の女性がトリコモナス症になると、早産になる可能性があると言われています。このような事態を起こさないためにも、気になる症状がある場合には早めに受診し、検査をしてもらいましょう。
トリコモナス症の感染経路
新規の感染者数が多いと言われているトリコモナス症ですが、どのような感染経路で感染するのか不安に思う人もいますよね。トリコモナス症は基本的に性行為によって感染しますが、実は性行為以外の感染経路で感染する場合もあります。どのような感染経路があるのかを知っておくことで、予防につなげることができるでしょう。パートナーとの性行為
先述したように、トリコモナス症の主な感染経路は性行為で、なかでも腟性交によって感染します。オーラルセックスやアナルセックスでも感染する可能性はありますが、一般的には腟性交によって感染することが多いです。
トリコモナス症の免疫はできないため、一度感染した人でも、再度感染する可能性があるので注意が必要です。
その他の感染経路
トリコモナス症は性行為以外に、日常生活の中で共有する物などを介して感染する可能性もあります。例えば、タオルやトイレの便座、浴そうなどです。また、妊娠中の女性がトリコモナス症に感染すると、出産時に子どもに感染する場合もあります。
性行為などをしていないのにトリコモナス症と同じような症状が出ているなどの場合、これらを介して感染した可能性があるでしょう。
トリコモナス症の検査・治療方法
トリコモナス症は、おりものや尿を検査するだけで比較的簡単に分かる感染症です。大切なのは感染者本人だけでなく、パートナーと同時に治療を行うこと。ここでは、トリコモナス症の検査方法や治療法などについて紹介します。トリコモナスの検査方法
トリコモナス症の検査方法は、男性と女性で異なります。男性の場合は尿を、女性の場合は腟分泌液もしくは尿を採取して検査をします。
男性の場合はトリコモナスの検出が難しいこともあり、仮に感染していたとしても「陰性」と判定されることもあり、注意が必要です。
トリコモナスの治療方法
トリコモナス症の治療は、内服薬や腟に挿入する腟錠で行います。トリコモナスに効果が認められている抗菌薬を7~14日程度服用、または腟内挿入します。再発を予防するためにも、薬による治療が終わったあとは医師の指示に従い、体内から菌が消失したか確認するための検査も必ず受けるようにしましょう。
トリコモナス症の3つの予防方法
トリコモナス症にならないためには、どうすれば良いの?と疑問に思う人もいますよね。そこでここでは、トリコモナス症を予防する方法について紹介します。性行為をするときはコンドームを正しく使用する
トリコモナス症を始めとするSTDを防ぐために、比較的簡単にできるのが性行為時にコンドームを使用すること。コンドームの使用は避妊の目的以外に、STDを予防する点でもとても大切です。正しくコンドームを使用することで、腟性交中のSTDのリスクを減らせます。
<コンドームの正しい使用方法>
・性器同士が接触する前に、ペニスが勃起している状態で着用する
(腟内挿入後など、性器に接触してから着用しても、STDの予防にはなりません。また、射精前にも少しずつ精子は流れ出ているため、避妊の観点でも最初から着用するのが望ましいです。)
・袋からコンドームを出すときなどに、傷付けないように気を付ける
・裏表に気を付けて使用する
・サイズが合ったコンドームを使用する など
感染が判明したらパートナーと同時に治療する
トリコモナス症に感染していることが分かったら、パートナーも同時に治療をすることが大切です。トリコモナス症は感染していても無症状で気づかないケースも多いため、万が一パートナーも感染していた場合、さらに他の人へと感染を広げてしまう可能性もあります。また、一度症状が改善しても、パートナーが無症状で感染している場合、再度自身がトリコモナス症に感染してしまうことも。このような連鎖を起こさないためにも、パートナーと同時に治療を行い、完治できるよう心がけましょう。感染者とできるだけ物の共有を避ける
家族などがトリコモナス症である場合、タオルなどはできるだけ共有しないようにします。もしもトイレや浴槽など、共有しないといけないスペースがある場合には、便器や浴そうの椅子などをしっかり掃除をしてから使用するなど、感染を予防するための対策を行ってくださいね。トリコモナス症について理解し、予防につなげよう
トリコモナス症は主に性行為により感染しますが、まれにタオルやトイレなど共用の物を介して感染することもあります。排尿時の痛みや黄緑色で生臭いおりものが出るなど、トリコモナス症のような症状がある場合は、早めに病院を受診しましょう。また、治療の際には再感染を予防するためにも、感染者本人だけでなくパートナーと同時に行うことが大切です。そしてトリコモナス症や他のSTDを予防するためにも、コンドームは正しく使用してくださいね。<参考文献>
※1 WHO.Fact sheet N°110Updated August2016, Sexually transmitted infections(STIs)