【男女別】クラミジアの症状・感染経路は?治療方法と注意点

クラミジアは日本国内で最も感染者の多い性感染症(※1)で、性行為によって感染します。潜伏期間が比較的長く、無症状のことも多いので、気づかぬうちに相手に移してしまう恐れがある病気です。放置していると別の病気を誘発することもあるため、早期発見・治療が重要です。今回はクラミジアの症状や感染経路をはじめ、治療方法や予防、注意点などを紹介します。

監修医師
山田光泰先生
山田光泰先生
産婦人科専門医。大学病院等で不妊治療を中心とした最先端の医療に従事しつつ、厚生労働医系技官として母子保健施策の推進にも携わってきた。現在は、女性のライフステージに応じたウェルネス向上をサポートすべく、テクノロジーを活用した課題解決にも取り組む。

【男女】もしかしてクラミジア…?セルフチェックリスト

クラミジアは男女ともに無症状のことも多い病気です。しかし、体からSOSサインが出ていることもあります。次のチェックリストに当てはまるものはないか、確認してみましょう。
チェックリスト
【女性】
✔ 頻尿になっている
✔ 排尿痛がある
✔ おりものの量や色に変化がある
✔ 不正出血がある
✔ お腹が痛い

【男性】
✔ 排尿痛がある
✔ 尿道が痛い・かゆい
✔ 尿道口から粘液、膿が出ている

これらの症状はクラミジアが原因の可能性もあります。特に排尿痛がある場合、不正出血や膿が出ている場合は、性感染症や体の不調の可能性があるため、早急に病院を受診しましょう。

そもそもクラミジアとは?

虫眼鏡を股にあてる女性
クラミジアは数ある性感染症の中で、見聞きする機会が多い病気です。しかし、実際のところはどんな病気なのかよく分からない人も多いのではないでしょうか。クラミジアの感染に関して不安な人も、まずはどんな病気なのか知っておきましょう。

クラミジアの原因と特徴

クラミジアは「クラミジア・トラコマチス」という細菌による性感染症です。クラミジアに感染した際の症状は冒頭で紹介した通りですが、自覚症状がない、または軽微なことも多いため、感染していても気づきにくいのが特徴です。

また、クラミジアは1~3週間の潜伏期間があるため、知らぬ間に相手に移してしまうことも。実際、クラミジアは日本国内で、すべての性感染症の中で患者数が最も多いことが分かっています(※1)。年代別で見ていくと若年層の感染が多く、男女ともに20代前半が最も感染者数が多いようです。(※2)

クラミジアの感染経路

クラミジアの感染経路は、キスやオーラルセックスを含む性行為です。コンドームをしないまま感染者と性行為をした場合、50%以上の確率で感染すると言われるほど、クラミジアは感染力が強い病気です。

主な感染部位は、男性だと尿道、女性は腟・子宮頸管、男女共通でのど(咽頭クラミジア)です。咽頭クラミジアの場合、通常のキスなら感染するリスクはそれほど高くありません。しかし、粘膜同士が接触しやすいディープキスだと感染リスクは高まります。

なお、クラミジア・トラコマチスは弱い菌のため、お風呂やタオルなどを介して感染する可能性は極めて低いと考えられています。過度に恐れず、正しい理解で予防をしていきましょう。

クラミジアの放置は危険

男女ともに、クラミジアを放置していると徐々に感染が拡がり、さまざまな病気を引き起こす恐れがあります。

<クラミジアが引き起こす可能性がある病気>

【女性】
・子宮頸管炎
・子宮付属器炎
・骨盤腹膜炎
・不妊症

【男性】
・尿道炎
・精巣上体炎
・不妊症

男性も女性も、クラミジアの早期発見・早期治療が大切です。異変を感じたら病院を受診しましょう。

【女性】クラミジアを放置した際の症状

ベッドの上でゆったり過ごす女性
クラミジアは女性の子宮頸管に炎症を起こします。放置すると悪化していき、炎症の範囲が広がってしまうため注意が必要です。女性がクラミジアを放置した際に起こり得る、子宮頸管炎と子宮付属器炎、骨盤腹膜炎について紹介します。

子宮頸管炎

子宮頸管炎は、頸管に炎症が生じた状態です。クラミジア性子宮頸管炎は、感染後およそ1〜3週間で発症します。無症状のことが多いですが、おりものの異常や性交痛といった症状が現れることも。気づかず放置してしまうと、炎症が子宮頸管から卵管にまで広がり、不妊の原因になる場合もあります。

子宮付属器炎

子宮付属器炎とは、卵管や卵巣が炎症を起こした状態です。クラミジアに感染後、子宮頸管から波及して卵管や卵巣の周囲にまで炎症が広がってしまいます。

子宮付属器炎の主な症状は、発熱や腹痛、嘔吐、黄色い膿のようなおりものや不正出血などです。慢性化すると卵管がふさがり、不妊や異所性(子宮外)妊娠の原因になることもあります。

骨盤腹膜炎

骨盤腹膜炎は、卵管炎や卵巣炎の炎症がさらに骨盤内全体にまで広がった状態です。多くは子宮頸管炎から始まり、子宮付属器炎から骨盤腹膜炎へと感染が進み発症します。骨盤腹膜炎の主な症状は発熱や悪心、強い下腹部痛、性交痛などです。高熱や強い痛みがある時は、入院治療が必要となる場合もあります。

【男性】クラミジアを放置した際の症状

医師と患者
男性の場合、クラミジアに感染すると尿道に炎症が生じ、放置すると炎症の範囲が広がってしまいます。ここでは、男性がクラミジアを放置した際に起こり得る、尿道炎と精巣上体炎について紹介します。

尿道炎

尿道炎は、尿道口からの膿や排尿痛といった症状が現れる病気です。クラミジア性尿道炎は感染後1〜3週間で発症するとされます。症状は軽いことが多く、ちょっとした違和感を覚えるだけで無自覚なことも少なくありません。

精巣上体炎

クラミジアが尿道から精管を上行し、精巣上体にまで及ぶと、精巣上体炎を発症します。主な症状は、精巣上体の腫れや発熱、腹部の圧迫感などです。放置すると陰のうに膿が溜まり、悪化すると中から膿が出てくることもあります。

クラミジアの検査・治療方法

モニターで患者に説明する医者
クラミジアが疑われる場合、女性は婦人科、男性は泌尿器科を受診しましょう。性感染症を専門に取り扱っている医療機関もあります。問診の後、適切な検査・治療が行われます。クラミジアの検査方法と治療方法を紹介します。

検査は分泌液・血液検査・うがいの3種類

性器クラミジアの検査は、子宮頸部・腟や陰茎からの分泌物、尿のサンプルを用いて行います。咽頭クラミジアが疑われる場合は、のどの分泌液を採取するか、うがいでの検査を行います。

女性の場合は基本的に腟分泌液の採取を行います。月経中など腟からの採取が難しい場合は、尿検査も可能なほか、血液検査でクラミジアの抗体を調べることもできます。

治療は抗生物質の服用

クラミジアは、抗生物質の服用によって治療します。治療期間の目安は2〜3週間ほどです。

第一推奨:アジスロマイシンの単回内服
第二推奨:レボフロキサシン7日間内服など。第一推奨のお薬で治らない場合などに使用します。

参考:MSDマニュアル 家庭版 – クラミジア感染症とその他の感染症

クラミジアの治療中は、自己判断で服用を中断してはいけません。薬を飲み切った後、1カ月後に必ずもう一度検査を受け、完治しているか確認して下さい

クラミジアの予防方法・注意点

ハートを持つカップル
性行為をしている以上、クラミジアを完全に予防することは難しいでしょう。しかし、少し意識するだけで感染リスクを抑えることは可能です。ここではクラミジアの予防方法と、検査・治療に関する注意点を紹介します。

コンドームを必ず使用する

クラミジアは性行為によって感染するため、性行為中は必ずコンドームを使用しましょう。コンドームを使用しても100%予防できるわけではないですが、感染リスクを抑えられます。

また、不特定多数の相手と性的接触を行わないことも大切です。もし複数のパートナーがいる場合は、定期的に検査を受けることをおすすめします。

治療はパートナーも同時に受ける

クラミジアはピンポン感染しやすいため、感染が判明したらパートナーも必ず受診することが大切です。片方だけが治療しても、相手が感染していたら性行為によって再び感染してしまいます。どちらかの感染が判明した時点でお互いに病院へ行き、同時に検査・治療を受けましょう。

妊娠・出産にまつわるクラミジアの注意点

室内でくつろぐ妊婦
妊娠中にクラミジアに感染すると、早産のリスクが高まります。絨毛膜羊膜炎(じゅうもうまくようまくえん)の発症によって、子宮の収縮を促すプロスタグランジンという物質が活性化されるためと言われています。

また、クラミジアに感染したまま赤ちゃんを出産すると、母子感染の恐れがあります。赤ちゃんがクラミジアに感染すると、新生児結膜炎や新生児肺炎を発症してしまうことがあります。新生児肺炎は、突然呼吸が止まってしまうこともある危険な病気です。

それらを予防するため、妊婦健診の一環として妊娠30週までに性病検査を受けることになっています。仮に陽性になったとしても、処方された薬をきちんと服用して完治させれば赤ちゃんに移してしまう可能性は低いです。

クラミジアの症状を疑う時は病院の受診を

病院に通うカップル
クラミジアは、無症状で感染に気づかないことも多い性感染症です。排尿痛やおりものの異常など、普段とは違う不調を感じた時は、クラミジアなどの性感染症や別の病気のサインかもしれません。

少しでも「おかしいな」と思った時は放置せず、医療機関を受診しましょう。仮に性感染症に罹患していても、しっかり治療をすれば問題ありません。不安な気持ちは抱え込まず、パートナーや医師に相談してくださいね。

参考文献
※1 国立感染症研究所 感染症疫学センター「感染症発生動向調査事業年報」
※2 国立感染症研究所「若年者で増加してきている性器クラミジア感染症」

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