淋病(淋菌感染症)とは? 症状やクラミジアとの違い、検査方法を解説

淋病(りんびょう、別名 淋菌感染症)は性感染症(STD)の1つで、男女ともにかかる可能性があります。近年、淋病は増加しており、クラミジアなど他の性感染症と同時に感染しているケースも珍しくありません。また、淋病は重症化すると不妊症につながる可能性もあるため、早めの受診と治療を行うことが大切。今回は、淋病について詳しく解説します。

監修医師
山田光泰先生
山田光泰先生
産婦人科専門医。大学病院等で不妊治療を中心とした最先端の医療に従事しつつ、厚生労働医系技官として母子保健施策の推進にも携わってきた。現在は、女性のライフステージに応じたウェルネス向上をサポートすべく、テクノロジーを活用した課題解決にも取り組む。

これって淋病の症状? 男女別チェックリスト

クリップボードとチェックリスト
まずは、以下のような症状に心当たりがないかチェックしてみましょう。いくつか当てはまる症状がある人は、淋病の可能性が考えられるかもしれません。

<男性用チェックリスト>
✔ 排尿する時に性器に痛みがある
✔ 性器にかゆみや違和感を感じる
✔ 黄色っぽい膿のようなものが出る
✔ 発熱がある
✔ 副睾丸が腫れる
✔ 喉の痛みや腫れがある

<女性用チェックリスト>
✔ 生理ではないのに出血がある
✔ 性行為時に痛みを感じる
✔ おりものが増える
✔ 下腹部の痛みがある
✔ 喉の痛みや腫れがある

淋病とは

手を繋ぐ男女カップル
淋病は、細菌の1種である淋菌が性器や喉、直腸などに感染する性感染症です。主に性行為によって感染する淋病は、男性・女性ともに感染する可能性があり、その確率は1回の性行為で約30%とされています(※)。ここでは、淋病に感染するとどのような症状が現れるのか詳しく紹介します。

淋病の症状

<男性の場合>
男性が淋菌に感染すると、2〜7日ほどの潜伏期間のあと、尿道が炎症を起こす急性尿道炎となります。急性尿道炎になると、排尿時にうずくまるほどの激しい痛みを感じたり、尿道口から膿が出てきます。また、喉に感染した場合は、喉の痛みや腫れ、発熱などが起こる場合も。このような症状があるのに適切な治療をせずに放置すると、前立腺炎や精巣上体炎を引き起こす可能性があり、不妊症の原因となってしまうケースがあります。また、感染していても無症状の場合もあり、気付かないこともあるようです。

<女性の場合>
女性は男性と比較すると、淋病の症状が現れにくいため、感染していることに気付かないまま過ごしている人も多いようです。主な症状は、不正出血やおりもの量の増加、下腹痛、喉の痛みなどが挙げられます。しかし症状に気付かないまま放置していると、卵管炎や骨盤炎症性疾患などを引き起こし、不妊症や異所性妊娠(子宮外妊娠)につながる場合があります。

また、妊娠中に淋菌に感染すると、流産や早産を引き起こす可能性も。少しでも心当たりのある場合は必ず妊婦健診などで医師に相談しましょう。

淋病の感染経路

淋病の感染経路は、主に性行為(オーラルセックス・アナルセックスなども含む)です。

◆セックスの場合
男性の精液や女性の腟分泌液を始め、腟内などの粘膜に淋菌が存在している可能性があり、接触することで感染します。

◆オーラルセックスの場合
男性の性器に淋菌が存在していると、オーラルセックスによってパートナーの喉に感染する可能性があります。一方、喉に淋菌が存在している場合も、オーラルセックスをすることで、相手のペニスを感染させてしまうことがあります。

◆アナルセックスの場合
アナルセックスの場合は、直腸に感染するリスクがあります。直腸へ感染した場合は、先述した淋病の症状以外にも、下痢や血便などの症状が出ることもあるようです。

また、まれにタオルや手指など、上記以外の感染経路で感染する場合もあります。さらに、女性は出産時に、産道を介した母子感染が起こる可能性も考えられます。

淋病とクラミジアの違い

淋病の症状はクラミジアの症状とよく似ていますが、男性の場合、淋病の方がより症状が強く現れる傾向にあります。一方、女性の場合はおりものの量や不正出血、下腹部の痛みなど両方とも同じような症状や、無症状のままであることも多いようです。

<男性>感染時の症状の違い

病名 症状
淋病 ・尿道から黄色っぽい膿のような分泌物
・排尿時の強い痛み
クラミジア ・尿道からサラサラした透明~白っぽい分泌物
・排尿時に軽い痛み

 

このように、淋病とクラミジアの症状はよく似ています。さらに、淋病とクラミジアは同時に感染している場合もあるため、感染原因を特定するには検査を行うことが大切です。

淋病の症状が出たら、まずは検査

医師の机
性行為後に喉に違和感がある場合や、不正出血・性器の痛みなど、淋病の可能性が考えられる場合には、早めの受診をして治療をスタートさせることが大切です。そこで淋病の検査には、どのような方法があるのか紹介します。

クリニックを受診して検査する

淋病の検査では、喉や性器を検査する方法があります。

検査方法 概要
うがい検査 クリニックで渡されるうがい液や水などで、うがいを行い検査する方法
尿検査 初尿(出始めの尿)をカップに採取し、検査する方法
腟分泌物検査(女性) 専用の綿棒などを腟内に挿入し、分泌物を検査する方法

先述したように、淋病は無症状であるケースも多く、気付かないうちに症状が進行してしまうこともあります。できるだけ早く適切な治療を受けられるように、体調変化や心当たりのある人は、早めに受診や検査を受けるようにしましょう。ただし、生理中の女性の場合は、検査の精度が落ちる可能性があるため、この期間の腟分泌物検査は受けられない場合があります。

淋病の治療

注射器とワクチン
淋病の治療では、抗菌薬の静脈注射が行われます。ただし近年では、菌やウィルスに対して抗菌薬が効きにくくなる薬剤耐性が問題となっています。そのため、治療をして約1ヵ月後に、完治しているか確認するための再検査を必ず受けることが大切です。

淋病の症状を予防するには?

コンドーム
自分もパートナーも淋病にならないようにするためには、どうすれば良いのでしょうか? 最後に、淋病を予防するために気を付けたいことを紹介します。

コンドームの使用が重要

性行為をする時には、淋病だけでなく他の性感染症を予防する意味でも、妊娠を希望する時以外はコンドーム使用が不可欠です。

また、コンドームを使用する際には、性行為の途中から付けるのではなく、最初から最後まで使用することが大事。さらに、オーラルセックスやアナルセックスなどの場合にも、コンドームを使用するようにしてくださいね。

心当たりがある人は早めに受診や治療を心がける

性行為をした後に、喉の痛みや性器のかゆみ・痛み、不正出血など、淋病の症状に心当たりのある人は、早めに治療を開始できるよう、まずは受診をしましょう。早期に治療をすることは、パートナーに感染させない予防の意味でも大切なこと。また、淋病は無症状のまま、気付かないうちに感染している場合もあるため、感染している可能性がある場合はパートナーと一緒に受診するのをおすすめします。

淋病の症状があれば、まずは早めの受診が大切


淋病は、気付かないうちに感染していることもある性感染症の1つ。男女ともに感染する可能性があり、症状が出ると強い痛みを伴ったり不妊症を引き起こす可能性があります。淋病の症状に心当たりがある人は、早めの受診と治療をするようにしましょう。また、淋病などの性病を予防するためにも、性行為を行う際にはコンドームを使用するようにしてくださいね。

参考文献
日本性感染症学会誌 「性感染症 診断・治療 ガイドライン2016」

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