もしかして不妊症…? チェックリストや考えられる原因を男女別に紹介

不妊症とは、避妊をせずに性行為をしてもなかなか妊娠に至らないこと。原因は一つだけとは限らず、検査をしても明らかな原因が見つからない場合もあります。また、不妊症は女性だけの問題と思われがちですが、男性に原因があるケースも少なくないんです。今回は不妊症の定義と割合、セルフチェックリストを始め、考えられる主な原因を男女別に紹介します。

監修医師
山田光泰先生
山田光泰先生
産婦人科専門医。大学病院等で不妊治療を中心とした最先端の医療に従事しつつ、厚生労働医系技官として母子保健施策の推進にも携わってきた。現在は、女性のライフステージに応じたウェルネス向上をサポートすべく、テクノロジーを活用した課題解決にも取り組む。

不妊症とは?定義と割合

不妊症に悩むカップルは少なくありません。いつから不妊症と判断されるのか、まずは定義と割合から見ていきましょう。

不妊症とは1年以上妊娠しないこと

不妊症とは「妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交をしているにもかかわらず、一定期間妊娠しないこと」です。この“一定期間”という言葉について、日本産科婦人科学会では「1年というのが一般的である」と定義(※1)しています。

なお、性機能に問題がないカップルが避妊せずに性交渉を行うと、1年間で80%、2年間で90%(※2)が妊娠すると言われています。

不妊症の割合は年齢とともに増加していく

日本では約5.5組に1組の割合(※1)で、不妊症のカップルがいると言われています。近年は晩婚化、妊娠希望年齢の高齢化により、不妊症の割合はさらに高まっていると考えられています。

不妊症セルフチェックリスト

自分が不妊症か気になっている人は、以下のリストで当てはまるものがないか確認してみましょう。

<女性向け>不妊症チェックリスト
✓ 避妊をせずに性交渉をして半年ほど経過しているが妊娠しない
✓ 性交痛がある
✓ 強い生理痛がある(痛み止めを手放せない)
✓ 生理不順である
✓ 過去に性病にかかったことがある
✓ これまでと違うおりものが出る
✓ 年齢が35歳以上である
✓ 肥満、または瘦せ型である

<男性向け>不妊症チェックリスト
✓ 性感染症になったことがある
✓ 精巣(睾丸・こうがん)が小さい
✓ 射精できない時がある
✓ 精巣を包んでいる袋(陰嚢・いんのう)にコブ、熱っぽさがある
✓ 停留精巣・そけいヘルニアの手術を受けたことがある
✓ おたふく風邪で高熱を出したことがある
✓ 体重が適正値の範囲外(肥満、または痩せすぎ)である
✓ 喫煙・飲酒習慣がある
✓ ストレスが溜まっている

性別関係なく、不妊症か気になっていて、さらにチェックリストに当てはまるものがある場合は、一度病院で相談しましょう。

【女性】不妊症の原因

不妊症の原因は、女性と男性の両方にあります。不妊の原因が男性のみの割合が24%、女性のみの場合が41%、男女ともに原因がある場合は24%、さらに11%は原因不明としています(※2)。ここでは女性側の原因を見ていきましょう。

排卵に関係するもの

妊娠には排卵が欠かせません。排卵が起こるタイミングは基本的に生理開始の約2週間前です。排卵と同時に女性ホルモンの分泌が変化し、体は妊娠に向けて準備をします。

しかし、排卵障害があると排卵が起こらないため妊娠には至りません。排卵障害の原因は多のう胞性卵巣症候群(PCOS)や、甲状腺ホルモンにかかわる病気、極度の肥満、過度な体重減少などです。

また、生理周期が39日以上で遅く来る稀発月経(きはつげっけい)の場合は、出血があっても排卵がスムーズに行われていない可能性があります。

卵管に関係するもの

卵管とは子宮とつながっている管で、卵子と精子が受精するための場所です。ただ、次のような原因で卵管が詰まっていると妊娠には至りません。

<卵管が詰まる主な原因>
・クラミジア感染症
・子宮内膜症
・卵管炎
・虫垂炎や子宮筋腫、卵巣嚢腫などの手術が原因の癒着

不妊症が疑われる時は、卵管造影検査を行って卵管が詰まっているかどうか確認します。

子宮に関係するもの

不妊症の原因には、子宮内膜の血流や子宮内の状態も関係しています。多いのは子宮筋腫や子宮ポリープなどですが、子宮の先天的な形態異常も不妊の原因となります。

頸管(けいかん)に関係するもの

子宮頸管は、子宮の出口付近の細い筒のような部分です。排卵が近づくと子宮頸管粘液(おりもの)の量が増え、精子が通りやすくなります。妊娠に必要なのは、子宮頸管粘液の十分な分泌と、精子の通過への適合です。

しかし、子宮頸管粘液の分泌量が少ない、または何らかの異常があると精子が子宮内に侵入しづらくなり、妊娠に至らないことがあります。

免疫に関係するもの

人間の持つ免疫機能は、細菌やウイルスなどの異物から体を守る働きを持ちます。しかし、何らかの原因で精子を異物と認識し、攻撃する「抗精子抗体」が子宮頸管や卵管の中で作られてしまうことがあります。抗体によって精子の運動性が失われると、精子と卵子が出会えないため受精が起きません。

【男性】不妊症の原因

不妊の原因が男性側にあることを「男性不妊」と呼びます。男性不妊の主な原因は、造精機能障害、性機能障害、精路通過障害の3つです。

造精機能障害

造精機能障害とは、精子を作る機能に障害が生じること。男性不妊の多くが造精機能障害とされます。機能の低下により、以下のような状態になります。

<造精機能障害による弊害>
・精子がない、少ない
・精子の運動力が低下する
・精子の形状が悪くなる

造精機能障害の原因は、精巣静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)などが挙げられます。その他にストレスの蓄積や、入浴・サウナによって精巣の温度が上昇することも関係していると考えられています。

性機能障害

性機能障害とは、ED(勃起不全)や腟内射精障害によって性行為がうまくできず、射精できない状態を指します。

<ED>
完全に勃起しない、または勃起はするものの維持できないといった症状が見られます。主な原因はストレスや精神的なプレッシャー、糖尿病などの病気です。病気が原因の場合はその治療を行い、バイアグラなどのED治療薬を用いることもあります。

<腟内射精障害>
自分でする時は射精するのに、性行為だと困難な状態のことです。原因は不適切な自慰行為やストレス、トラウマなどです。カウンセリングやリハビリを行うことで改善を目指します。

精路通過障害

精路通過障害とは、精子が通る道が詰まっていることで、精液中に精子が全く存在しない、または数が基準に満たない状態のことです。射精はしても、精液がない・少ないことで妊娠に至りません。精路通過障害の原因は、過去の炎症や生まれつきなどです。

不妊症の検査方法

不妊症の検査では、女性と男性どちらに原因があるのか探っていき、結果をもとに適した治療法が提案されます。ここでは、不妊症の検査方法を男女別に紹介します。

【女性】検査方法

卵巣や卵管、子宮の病気の有無を確認する検査が行われます。

<主な検査内容>
・内診・経腟超音波検査
・子宮卵管造影検査
・ホルモン検査 など

【男性】検査方法

精子の数・運動率や、男性器の状態などを確認する検査が行われます。

<主な検査内容>
・精液検査
・超音波検査
・血液検査 など

不妊症か心配な場合は病院で相談してみよう

不妊症に悩むカップルは約5.5組に1組。実は多くのカップルが悩んでいる問題です。妊活はふたりが同じ気持ちで進めることが大切です。不妊症の原因は女性だけでなく男性にある場合もあるので、心配な場合は医師に相談してくださいね。

参考文献
※1 国立社会保障・人口問題研究所「2015年社会保障・人口問題基本調査」
https://www.ipss.go.jp/ps-doukou/j/doukou15/NFS15_gaiyou.pdf
※2 F.H. Comhaire, 1996, “ Male infertility : clinical investigation, cause evaluation and treatment”
※3 Henry, L. (1961). Some data on natural fertility. Eugenics Quarterly, 8(2), 81-91.

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