大人も無料になるの?今こそ知っておきたい、HPVワクチンのお話

子宮頸がんなどを予防するHPVワクチンについて、厚生労働省が2022年4月から8年ぶりに積極的な接種勧奨を再開することが決定しました。

一時はその安全性に疑問がもたれ、接種勧奨にストップがかかっていたHPVワクチン。「本当に安全なの?」「どの種類を打てばいいの?」など、気になる疑問に医師がお答えします。

教えてくれたのは…
山田光泰先生
山田光泰先生
産婦人科専門医。大学病院等で不妊治療を中心とした最先端の医療に従事しつつ、厚生労働医系技官として母子保健施策の推進にも携わってきた。現在は、女性のライフステージに応じたウェルネス向上をサポートすべく、テクノロジーを活用した課題解決にも取り組む。

#01 HPVワクチンって本当に安全なの?

編集部:先生、HPVワクチンの積極的勧奨が再開するかもという話を聞いたのですが、これって本当ですか?

山田先生:お、よく知ってますね!ちょうど今日、「2021年11月26日付けで積極的勧奨差し控えを終了し、2022年4月から接種対象者への接種勧奨を再開する」というニュースが出たんですよ。

編集部:はい!今までは、厚生労働省からみんなにHPVワクチンを打ちましょうと勧めるのをやめていたんですよね。「ワクチンを打つとひどい後遺症が残る」なんて言われてたりもしていましたが…それは結局ウソだったんですか?安全性が証明されるまでに、どうしてこんなに時間がかかったのでしょうか。

山田先生:日本でHPVワクチンの定期接種が始まった頃、ワクチンを打った人の一部に、今までのワクチンでは見られないような色んな症状が出た人がいて、「HPVワクチンの副作用ではないか」と大々的にニュースになりました。具体的には、全身に痛みが出たり、感覚が鈍くなったり、うまく歩けなくなったり、記憶障害が出たり。

そこで、厚労省は原因を調べるために一旦「ワクチンを積極的に勧めるのは中止」して、専門家を集めた研究班を立ち上げました。様々な調査で膨大なデータを集めて解析が行われましたが、最終的には、これらの症状が、ワクチン接種が原因で起きたという証明には至りませんでした。調査の結果を簡単にまとめると、ワクチンを打っていない人の中にも同じように「多様な症状」が見られる人が同じくらいの割合でいることが分かったんです。実は「HPVワクチンが悪さをしていたわけではなかった」ということですね。

編集部:なるほど!でも実際、ワクチンによって体の調子が悪くなる可能性もゼロではないんですよね?

山田先生:重い症状が出ることは滅多にありませんが、万が一治療が必要になったり、障害が残るなどの健康被害が生じてしまった場合は、「医療費・障害年金」の給付が受けられます。これはHPVワクチンに限った話ではなく、法律に基づく救済として、すべてのワクチン接種に共通する制度です。

編集部:そうなんですね!もし、その症状がHPVワクチンによるものなのか、検査してもよく分からなかった場合って、救済してもらえるんですか?

山田先生:救済制度は「因果関係がきちんと証明されなくても、症状が絶対にワクチン接種によるものじゃないとは言い切れない場合でも救済の対象とする」という考え方です。万が一健康被害が起きたときは、お住まいの市区町村に相談しましょう。

編集部:あともう1つ聞きたいことが。小学6年生〜高校1年生は公費助成があってHPVワクチンを無料で打てるということは知っているんですが、「小学6年生〜高校1年生の時に打ち逃した大人も、今後無料で打てるようになるかもしれない」とも聞きました。私のまわりにも、まだ接種していない友達が何人かいるのですが、具体的にどのような人が対象になるのでしょうか。

山田先生:これは「キャッチアップ接種」と呼ばれていて、まだ確定はしていませんが、なんとか実現してもらいたいなと思って私も気になっています。もちろん、だれでもかれでも無料接種の対象になるわけではありません。日本でHPVワクチンが公費助成の対象になったのは2010年、その後、国からの積極的勧奨がストップしたのが2013年です。それから現在までの期間に小学6年生〜高校1年生だった女性、つまり1997年〜2005年頃に生まれた女性がキャッチアップ接種の対象になる方向で議論がされています。

編集部:私は1995年生まれで、すでに接種済みなのですが、そうなると同い年の友達は自費になってしまいそうですね。自費になったとしても、やはり打っておいた方がいいのでしょうか…?HPVワクチンの必要性について、もう少し詳しく知りたいです!

#02 知っておきたい、HPVワクチンのこと

編集部:私の家族は特にがん家系ではないと思うのですが、子宮頸がんになりやすいタイプの人っているんですか?

山田先生:子宮頸がんは遺伝とはほぼ無関係です。子宮頸がんの原因のほとんどは、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルス。セックスの時に男性の性器から感染して子宮の入り口部分に棲み着いてしまい、運が悪いと徐々に細胞を変化させ、子宮頸がんになってしまうというものです。なので、セックスの経験がある女性なら誰でもかかる可能性があります。

国内では毎年約1.1万人の女性がかかり、約2,800人もの方が亡くなられています。30歳代までに子宮頸がんの治療のために子宮を失い、妊娠できなくなってしまう方も、毎年1,200人ほどいるんです。

編集部:ということは、計算すると……女性の約70人に一人が子宮頸がんになるということですね。想像よりもずっと多いです。

山田先生:心配になるよね。でも、知っていると思うけれど子宮頸がんはワクチンでかなり予防できるんですよ。2020年にスウェーデンから発表された最新の研究では、17歳になる前にワクチン接種を受けた女性では子宮頸がんになる人がなんと88%も減少、キャッチアップ接種(年齢が少し高いために無料接種が受けられなかった年代への接種)として17~30歳で受けた女性でも53%減少するというデータが出ています。

編集部:子宮頸がんを防ぐために、ワクチン接種は大切なんですね!でもHPVワクチンはインフルエンザの予防接種とかと違ってちょっと複雑なところもあるというか…。たとえば、ワクチンの種類としてよく聞く「2価」「4価」「9価」は何が違うんですか?

山田先生:HPVワクチンの「価」は「あたいする」という意味で、2価のワクチンは2種類のHPV、4価は4種類、9価は9種類HPVに対応しているということになります。実はHPVには100種類以上のタイプ(型)があって、そのうち子宮頸がんの原因となる悪い型のウイルスは15種類ほどです。

編集部:公費助成の対象になっているHPVワクチンは、2価と4価の2つですよね。

山田先生:そうです。日本では現在、「サーバリックス」という2価のワクチンと、「ガーダシル」という4価のワクチンが無料で接種できます。サーバリックスとガーダシルは、いずれもHPVの中で最も子宮頸がんを起こすリスクの高い16型と18型に対応しています。そのため、子宮頸がんを引き起こす悪いウイルスの約6〜7割を、このワクチンで防ぐことができるのです。

編集部:「低リスク型」「高リスク型」というのは、子宮頸がんになるリスクのことですか?

山田先生:その通り。6型、11型は子宮頸がんではなく、尖圭コンジローマという別の性感染症を引き起こすウイルスです。

編集部:HPVワクチンが予防してくれるのは、子宮頸がんだけじゃないんですね!尖圭コンジローマ…初めて聞きました。

山田先生:尖圭コンジローマは良性の腫瘍なのですが、放っておくとどんどん大きなイボになったり、稀に癌になることがあります。また、尖圭コンジローマがある人はHIVに10倍以上も感染しやすくなるとも言われているんですよ。

編集部:私が接種したのは多分4価だったと思うんですけど、子供の頃に2価や4価のワクチンを接種した人は、大人になってから9価のワクチンも接種した方がいいんですか?

山田先生:いい質問ですね。これは結論から言うと

・原則的には同じワクチンで3回の接種を完了したほうがよい
・2価もしくは4価のワクチンで、計3回の接種をすでに完了している場合は追加で打つ必要はない
・2価もしくは4価のワクチン接種がまだ途中の場合は、残りの接種を9価で行うこともできるが推奨はされていない

という答えになります。2価もしくは4価のワクチンで、一番防ぎたい16型、18型をカバーできていることと、異なるワクチンを交互に接種する(交差接種)ことの有効性と安全性についてのデータがまだ限られていることがその理由です。9価のワクチンは新しくて良いワクチンですが、公費助成の対象とはなっていないので、希望する場合は自費で打つことになります。

編集部:なるほど!じゃあ私は一旦HPVワクチンは初体験をする前に接種したほうがいいと聞いたのですが、すでにセックスを経験している人(=HPV感染してしまっているかもしれない人)でも効果はあるんですか?

山田先生:はい、ある程度の効果はあります。まだ感染していない型のウイルスについては感染を防いでくれるので、セックスを経験済みの人でもワクチンを打つ意味はあるんです。ただし、すでに感染してしまっているウイルスをやっつけたり、子宮頸がんの進行を遅らせるような効果はありません。

#03 HPVワクチン接種のポイント

編集部:ワクチン接種って、やっぱり痛いんでしょうか…。

山田先生:注射なので、多少は…(笑)。でも、新型コロナウイルスと同じ筋肉注射なので、そんなに心配しなくてもいいですよ。

編集部:打つ際に、注意するポイントみたいなものはありますか?

山田先生:一般的な予防接種を受ける時と同じですが、以下のことを心がけてください。

編集部:接種は3回行う必要があるんでしたっけ?

山田先生:はい。通常は1年以内に3回の接種を終了することが望ましいとされています。
サーバリックスは、初回接種の1か月後に2回目、6か月後に3回目の接種を行います。
ガーダシルは、初回接種の2か月後に2回目、6か月後に3回目の接種を行います。

編集部:意外と長期戦…。1回目を接種した後、2回目3回目と忘れないように、ちゃんとスケジュールに予定を入れておいた方がよさそうです。でも、3回打てば安心ですね!

山田先生:HPVワクチンを打つことで、高い確率でHPV感染を予防することができますが、子宮頸がんを100%防げるわけではありません。そのため、20歳以上の女性は、2年に1回は子宮頸がん検診を受けるようにしましょう。ワクチンで感染を防げなかった場合も、検診で早期に異常を見つけられれば大変な治療を受けずに済むからです。

編集部:HPVワクチンと子宮頸がん検診はセットですね!どちらも将来の自分を守るために大切なこと、しっかり覚えておきます。

出典

厚生労働省
​​https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_22419.html
https://www.mhlw.go.jp/content/000679261.pdf