HIV/エイズとは? 感染経路や予防策、もしものときの相談窓口も
エイズとは、HIV感染後に特に症状が出ない無症候期を経て、さまざまな合併症が生じた状態を指します。日本では2013年のHIV感染者・エイズ患者ピーク以降、徐々にその新規報告数は減ってきていますが、最近では20~30代と比較的若い世代の新規感染者が多いです。そこでHIV感染やエイズについて、感染経路や予防方法などについて解説します。
- 監修医師
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陣内理子先生産婦人科専門医、医学博士。久留米大学(2011年)、順天堂大学大学院卒業。大学病院及び関連施設に従事し、2016年より2年間ヨーテボリ大学留学。一般婦人科、不妊治療、周産期、無痛分娩。
HIV感染とエイズとは
エイズ(AIDS:Acquired Immunodeficiency Syndrome、後天性免疫不全症候群)とは、HIV感染によって合併症が生じた状態のことです。HIV感染からエイズ発症までは時間があり、人によってその期間(無症候期)は異なります。まずはHIV感染症とエイズについて解説します。
HIV感染とは
HIVはヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus)の略称です。このウイルスによって、人の体を守るために通常働く免疫機能が、徐々に低下していきます。HIVは主に、血液成分の白血球に含まれる「CD4陽性Tリンパ球」や「マクロファージ」という細胞などに感染します。
エイズとは
HIVがこのCD4陽性Tリンパ球やマクロファージを破壊し、その数を減らしていくと、免疫機能が崩れることによりさまざまな病気にかかりやすくなります。このように合併症を患った状態をエイズと呼ぶのです。
エイズ発症の診断にはその指標となる指定の23疾患が決められており、HIV感染とその23疾患のいずれかを発症した場合にエイズと診断されます。
指標となる23疾患については、厚労省の以下のサイトをチェックしてみてください。
参考:後天性免疫不全症候群エイズ発症までは3段階
HIV感染からエイズ発症までは、大きく3段階に分けられます。
①感染初期(急性期) HIV感染から数日すると、発熱などインフルエンザの時のような症状が見られることもあるが、数週間で症状が落ち着いてくる。 ②無症候期 症状が特に表れない時期で、人により数年~10年以上この期間が続く。
また、この期間にもウイルスが新たに産生され、体内のCD4リンパ球などに感染し、破壊していく。③エイズ発症期 免疫力は低下し、さまざまな病気にかかりやすくなる。指定疾患にかかるとエイズ発症となる。 HIV/エイズの感染経路とは
HIVの感染経路は、大きく3つあるとされています。主な感染経路は性的接触ですが、それ以外の経路でも感染する可能性はあります。そこで、どのような感染経路があるのか見ていきましょう。
性的接触による感染
HIV感染で最も多いのは、性行為などの性的接触によるものです。2021年に新規報告されたHIV感染経路では、性的接触が最も多い割合を占めています。HIVは精液や腟分泌液、血液などに多く含まれており、これらが性行為などによって粘膜、傷口などを介して感染するのです。
血液による感染
輸血や注射器などの共用することでHIVに感染する可能性もあります。例えば覚せい剤などの薬物を注射器などで回し打ちすることや、医療現場での針刺し事故などが挙げられます。しかし輸血に関しては、輸血製剤を管理する日本赤十字社がHIV検査を行っているため、感染の危険性は極めて低いとされています。
母子感染
HIVの母子感染には、分娩時の産道感染や胎内感染、また母乳を介した感染の3つの感染経路があります。このため、妊娠した女性がHIV陽性となった場合には、妊娠中においても抗HIV薬を飲んだり、経腟分娩ではなく帝王切開での分娩にします。また、母乳を控えて赤ちゃんを人工乳(粉ミルクなど)を控えて育てたり、赤ちゃんにも抗HIV薬を投与したりすることで、赤ちゃんへの感染率を下げることができるとされています。
エイズやHIV感染を予防するには?
HIVについて知っていくと、性行為などの性的接触に不安を感じる人もいるかもしれません。HIV感染を予防するためには、性行為時にコンドームを使用することが大切です。また自分が感染の心当たりがある場合にも、他の人へうつさないことや、エイズ発症を抑えるためにも、早目に受診し検査や治療をうけることが何より重要です。
不特定多数との性行為を避け、コンドームを適切に使用する
HIV感染を防ぐには、不特定の人との性行為を避けることや、性行為時にはコンドームを適切に使用することが大切。不特定多数の人との性行為は、相手がHIVに感染しているかどうかを確認できなかったり、誰から感染したのか分からなくなってしまう可能性があります。また、コンドームはエイズだけでなく、他のSTDを予防する上でも重要です。
コンドームを使用する時は、射精する直前につけるのではなく、性行為のはじめから終わりまでつけておくのがポイント。またコンドームと異なり、ピルの服用や他の避妊具の使用は、あくまでも避妊目的で行います。HIVなどのSTD感染の予防ではないため、必ずコンドームは使用するようにしましょう。
心当たりがある場合には、早めに検査を受ける
HIV感染しているかも…と心当たりがある場合には、できるだけ早く医療機関を受診し、検査する必要があります。
HIVに感染している場合でも、近年では早期に治療を始めることで、エイズの発症を抑えることが可能です。その結果、長い間、健常な時と同じような社会生活を送れます。また、治療を継続することで体内のウイルス量を大きく減らすことができれば、他の人への感染リスクも低くできます。そのためにも心当たりがある場合には、まずは検査を受けるようにしましょう。HIV感染やエイズは1人で悩まずに相談を
HIV感染の可能性や自分の症状がエイズかも…と悩む時には、各自治体でHIVの検査を受けられたり、専門の支援団体に相談できたりします。1人で悩まを抱えずに、まずはこれらの場所で相談してみましょう。
また、現在全国に約380のエイズ治療拠点病院があり、治療やエイズなどの相談にのってもらえます。他にもHIV感染者の状態によって受けられる福祉サービスなどもあり、各市町村や福祉事務所などで、専門のカウンセラーなどに相談することも可能です。ネットや自治体のホームページなどでも、検索すると相談先が記載されているので、自分が安心してサポートを受けられる団体に相談してみることをおすすめします。
エイズは早めの検査と治療がカギ
HIV感染は早期発見と適切な治療により、エイズ発症を防ぐことで健康な時と変わらない生活が送れる感染症です。できるだけ長く健康な状態を保つためには、早めに検査を行い、治療を開始することがカギとなります。しかしHIV感染に心当たりがある場合は、不安や他人の目が気になり、なかなか人へ相談できずに1人で悩みを抱える人も多いでしょう。各自治体には、HIVやエイズに関する相談機関や専門団体がそれぞれあります。1人で悩まずに、まずはそれらの相談機関に相談してみてはいかがでしょうか? HIV感染やエイズについて正しく理解し、HIVを含めたSTD感染予防のためにもコンドームは正しく使用してくださいね。
参考文献
令和 3(2021)年エイズ発生動向