セルフプレジャーは恥ずかしいことじゃない。いまを生きる女性に知ってほしい“性”のお話

今日のテーマは、“性”について。

ネットや女性誌などでは、セルフプレジャーという言葉とともに性に関する話題が取り上げられることが増えてきましたが、「性について考えるのは恥ずかしい」「悩みがあっても周りに相談できない」という女性は少なくありません。

そこで今回は、女性の性機能に関する相談・治療を行っている産婦人科医の村田佳菜子先生に、性のことやセルフプレジャーについて正しく理解することの大切さを伺いました。

教えてくれたのは…
村田佳菜子先生
村田佳菜子先生
日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医、関東ジェンダー医療協議会理事。婦人科医として勤務する傍ら、2019年から女性医療クリニックLUNAで女性性機能外来を担当。クライアントの気持ちや状況に寄り添いながら、あらゆるセックスの悩みに対し医学的にアプローチ。ひとりひとりの性を豊かにすることから、日本の社会をもっと豊かにしたいという思いで活動中。

セルフプレジャーは自分を理解する方法の一つ

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編集部

村田先生、そもそもセルフプレジャーとは何のことですか?

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村田先生

自分自身の性器や体を触ることで快感を得る、いわゆる1人エッチのことです。「self(自身の)ー pleasure(よろこび)」と直訳できるように、ポジティブな意味をもっていて、まったく恥ずかしいことではありません。

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編集部

その行為には、どのような意味があるのでしょうか。

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村田先生

セルフプレジャーをすることは、医学的にもさまざまなメリットがあります。詳しくは後日に別の記事で解説しますが、まず一番大きな意味としては、自分の性反応について知ってみるということ。

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編集部

性反応というのは、気持ちよく感じる過程のことですね。

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村田先生

そうです。性行為というのは、体が性的に段階を経て反応するから気持ちいいのであって、いきなり挿入されても気持ちよくないし、オーガズムにも達しづらい。セルフプレジャーをすることで自分の気持ちいい場所が分かったりするので、少しずつ自分の体がどのように反応しているかを知ることができるんです。でも、自分の体について知らない女性は意外と多いですね。

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編集部

まず男性と違って、女性が自分の性器を見るのは難しいですもんね…。

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村田先生

鏡なんかを使わない限り、見えませんからね(笑)。とにかく伝えたいのは、男性に任せっきりで「気持ちよくない!」と一方的に不満をもつのではなく、自分の体について理解して、相手と共有することが大切だということ。すると、パートナーとの関係をよりよく保つことにも繋がります。

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編集部

なるほど。それはセックスに限らず、大事なことですね。

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村田先生

はい。広い意味でいうと、これからの社会で女性が自立していくためにも必要な考え方だと思っています。昔に比べると、仕事でもプライベートでも、選択肢がたくさんある世の中になってきたと感じますが、どんな時に幸せや充実感を感じるのか?自分自身をよく理解することで、より納得のいく選択をすることができるのではないでしょうか。少し話がそれてしまいましたが、私が性に関することについて多くの女性に知ってほしいと思っているのは、そういう意味でもありますね。

誰もが楽しんでいいし、しなくてもいい。共通のルールはありません

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編集部

セルフプレジャーについての世間の扱いは、昔と比べて変わってきているのでしょうか?

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村田先生

以前はあまり取り上げられませんでしたが、ここ数年では女性誌などでもよく取り上げられるようになりましたね。女性でも抵抗なく使えるおしゃれなセルフプレジャーアイテムなんかもかなり増えてきているように感じます。しかしちょっと真面目な話をすると、性科学の分野で自慰に関する論文はまだ少なく、特に日本での研究はほとんど見たことがありません。それだけ、今までの社会では問題視されてきていなかったのでしょう。

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編集部

そうなんですね!それはどうしてですか?

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村田先生

例えば性行為の場合、性病や性交痛などの体の異常から、夫婦関係のトラブルまで、さまざまな問題につながる可能性が考えられますよね。でも、セルフプレジャーについては、直接的に何かのトラブルの原因になる……というイメージが湧きづらくないですか?

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編集部

はい。そもそも、家族や友人とセルフプレジャーについて話をしたことが一度もありません…。

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村田先生

そのような人がほとんどだと思います。ただ、性機能外来で診療を始めてから色々な相談を受けてきて、「この人にはセルフプレジャー(マスターベーション)が役に立つ可能性もあるな」というようなシチュエーションをたびたび目にしてきました。

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編集部

例えばどんな場面でしょうか?

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村田先生

診療の中で、セルフプレジャー(マスターベーション)が有効であると考えられるものはオルガズム障害や興奮障害などです。これらの原因には心理的なものなど多くの要素があり非常に複雑ですが、ある程度満足に性行為ができているけど、もっと性行為の質を上げたいとか、オルガズムに達してみたいといった場合にはとても有効だと思われます。

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編集部

なるほど。でも、絶対にやった方がいいというものでもないんですよね?

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村田先生

もちろんです。抵抗がある人には無理にはおすすめしません。どちらかというと主治療があって、その補助として勧めることが多いです。セルフプレジャーはあくまでも選択肢の一つであって、したくない人はしなくても問題ありません。

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村田先生

セルフプレジャーには今お話ししたような治療的な活用の仕方もありますし、日常の中でほかにも効能がいくつもありますが、実はしない方が良い場合もあります。それはセルフプレジャーをすることで罪悪感を抱いてしまう場合です。罪悪感は自己嫌悪に繋がり精神的な負担になりますので、罪悪感を抱かないようにするか、どうしても罪悪感を覚えてしまう人には積極的にセルフプレジャーをすることをおすすめしません。

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編集部

確かに、セルフプレジャーという言葉が広まったのはここ数年。正直、私も“オナニー”という呼び方しか知らなかった頃は「男性だけがするもの」「恥ずかしいこと」だと思っていました。

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村田先生

そうですね。例えば近年の欧米では性に対して比較的オープンな雰囲気があり、女性が快感を得られる手段としてセルフプレジャーは当たり前という認識があります。しかし日本だとまだまだ「性を楽しむこと」「性的快感をえること」ははしたないこと、いけないことと感じる人もいて、「いけないことだと思って、した後に後悔しちゃうんです」という患者さんが結構います。先ほどセルフプレジャーにはさまざまなメリットがあるとお伝えしましたが、罪悪感をもっていると、逆に心身によくない影響を与えかねないんです。

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編集部

日本で先生のようなお医者さんに相談にきている人は一部だと思うので、同じように悩んでいる人は結構いるのかもしれませんね。

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村田先生

セルフプレジャーもセックスも、睡眠や食事のように自然なことです。楽しみたい人は楽しめばいい、したくない人はしなくていい。自由に選択していいんです。性に関する経験や考え方、性欲は人それぞれなので、「こうあるべき」という共通のルールはありません。それを踏まえた上で、一人でも多くの人にセルフプレジャーについての正しい知識を知ってもらえたら嬉しいです。

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編集部

私たちsai+ journal編集部も、女性はみんなセルフプレジャーをするべき!と捉えられないように、伝え方に気をつけていかなければと思っています。

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村田先生

すべては女性の健やかなウェルネスライフのために、私たちができることをしていきたいですね。次回は、セルフプレジャーの医学的なメリットについてお話します。

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