セミナーレポート「日本における女性のヘルスケアの現実」 古市優子 × 山田光泰 × 三輪綾子

2022年7月7日にミッドタウン日比谷で開催された、一般社団法人 予防医療普及協会による「『知らなきゃヤバい』女性の活躍を支援するためのヘルスケアセミナー」。本セミナーに、sai+journalでも活躍する産婦人科専門医・山田光泰先生が登壇しました。

本セミナーは、これからの時代の女性活躍のために、企業や社会全体が「女性のヘルスケア」にどうアプローチができるかのヒントを与える場として設けられ、会場には、幅広い年齢層、女性だけでなく男性も多く訪れていました。

山田先生が登壇したのは、第一部「日本における女性のヘルスケアの現実」。Comexposium代表取締役および米国Advance Women at Work™ Advisorなど、国内外で活躍する古市優子さんとともに、トークセッション形式で、現在の日本における女性のヘルスケアの実態と解決のヒントを話し合いました。

海外と日本における女性のヘルスケア

古市さんと三輪先生
写真:古市優子さん(左)、三輪綾子先生(右)

海外での活躍も目まぐるしい古市さんによると、例えばアメリカやフランスにおけるビジネスでの「男女平等」は、日本よりももっとシビアだそう。ビジネスでのジェンダーギャップがほとんどないからこそ、生理まわりの悩みも低用量ピル(以下、ピル)の服用などによって自己解決する女性がほとんどなのではないか、と分析していました。

古市さん
「私自身も仕事の繁忙期や外せないスケジュールのときは、ピルによって生理日移動をしています。ビジネスに影響がないように管理するためにも、ピルの正しい知識を持つことは大切だと感じています。日本がこれから迎えるであろう、より女性が活躍する時代には、女性のヘルスケアを企業や社会全体で充実させることがキーになってくるのではないかと思います」

日本における低用量ピルのイメージは?

「ピル=避妊薬」というイメージがいまだに根深く残っている日本。10年ほど前にピルの服用を開始した古市さん自身も、最近になってやっと公の場でピルを服用していると話せるようになり、世の中の変化を徐々に感じているとのこと。

古市さん
「当時は、家族や友人に服用を大っぴらには言えなかったですね。今でも世代によって『ピル=避妊薬』という偏ったイメージが根強いものだと思います」

クリニックフォアでオンライン診療を行う山田先生によると、地域によってもピルへのイメージにバラツキがあるそう。

山田先生
「地元では周りの目もあって婦人科に行きにくい、相談しにくい、という理由でオンライン診療による処方を希望する患者さんも多いです。オンラインを受診される方はピルについてある程度すでに知識をお持ちの方が多いのですが、世間一般的にはピルという選択肢を知らない方のほうがまだまだ多数派でしょう」

女性の健康問題による「労働損失」は年間4,911億円

三輪先生と山田先生
写真:山田光泰先生(右)

女性の健康問題による「労働損失」は年間4,911億円とも言われています(※)

ここからも分かるように、女性のヘルスケアを充実させることで、企業や経済へのインパクトは大きくなることが考えられます。だからこそ、より企業サポートや社会制度を整える必要がある、と3人。

古市さん
「HPVワクチン、子宮頸がん検診、ピルの処方など、女性特有の予防・対処を、すべてではなくとも企業がサポートすることは、企業の損失以上のリターンが期待できる有効な投資なのではないでしょうか」

三輪先生
「企業の女性ヘルスケアへのアプローチは、社会体制の変革や意識改革への一番の近道だと考えています。女性が自分のカラダを見直す機会を企業が与えることで、個々の健康に対する意識向上にもつながるはずです」

山田先生
「ピルは、避妊以外にも子宮体がんや卵巣がんといったがん罹患リスクの軽減、PMSや生理痛症状の緩和など、さまざまなメリットが期待できる薬です。ほかにも、最近ではキットを使用してオンラインでHPV検査が完結できるなど、ヘルスケアの選択肢は急速な拡がりを見せています。正確で分かりやすい情報を発信し続け、社会全体として女性のヘルスケアに対する理解がより深まるようにしていきたいですね」

―― セミナー概要 ――
・名称 「知らなきゃヤバい」女性の活躍を支援するためのヘルスケアセミナー
・日時  2022/7/7(木) 16:30-18:30
・会場 ミッドタウン日比谷 カンファレンスROOM1
・タイムスケジュール
16:30-17:30「日本における女性のヘルスケアの現実」 古市優子 × 山田光泰 × 三輪綾子
17:30-18:30「女性のヘルスケアを変えれば日本の経済が変わる」 三輪綾子 × 堀江貴文
・主催 一般社団法人 予防医療普及協会

参考
※Tanaka E,Momoeda M,Osuga Y et al.J Med Econ 2013; 16(11): 1255-1266

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