#編集部体験コラム 月経過多の編集部員が低用量ピルを飲んでみた
ナプキンをしているのに、経血が漏れてしまった時の、あの絶望感たるや。特に2日目や3日目の量が多い日の夜は、いつもより念入りに対策をするのに、翌朝の布団には「見たくないもの」が。そんな朝を何度も迎えたことがある、「元」月経過多のsai+journal編集部メンバーが、低用量ピルを服用した体験記をお届けします。
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編集部YUIアラサー後半のsai+journal編集部員。ピル歴8ヶ月。PMSは症状ないが、生理の前日くらいから頭痛と腹痛あり。最近インティメイトケアを実践中!山田光泰先生産婦人科専門医。大学病院等で不妊治療を中心とした最先端の医療に従事しつつ、厚生労働医系技官として母子保健施策の推進にも携わってきた。現在は、女性のライフステージに応じたウェルネス向上をサポートすべく、テクノロジーを活用した課題解決にも取り組む。
「ピルを飲んだらどのくらい減るの?」月経過多の改善にピルという選択
sai+journalを通じて「低用量ピル」のことを知る中で、「月経過多」にも効果があることを知りました。服用する前はどのくらい月経量が減るのか想像ができず、半信半疑に(笑)。4月に服用をし始めてから半年以上、服用継続をした結果、明らかに月経量が減ったことを実感できています。
編集部YUI:私は友人と生理の月経量について話をしていて、自分が月経過多だと知りましたが、「月経過多」の定義や、月経過多と「判断する目安」はあるのでしょうか?
山田先生:過多月経とは、1周期の月経あたりトータルの出血量が140mlを上回るものとされています。…って言われても、、ですよね。実際に量を測ることは難しいので、目安としてはナプキンが1時間ももたないくらい出血の勢いがある、もしくはレバーのような塊が出てくる方は当てはまると考えて下さい。
編集部YUI:その定義で行くと、私はまさに月経過多ですね(笑)。ピルを服用する前は、夜に40cmのナプキンが必須で、4日目くらいまで日中も30cmサイズのナプキンを使ってました。8日くらい続くんですが、油断して漏れたらどうしよう…という気持ちが強かったので、常に大きなナプキンを愛用していました。
山田先生:それはなかなか大変でしたね!ピルを服用しはじめて、月経量は減りましたか?
編集部YUI:だいぶ減りました!今は初日でも20cmのナプキンで問題ないです。服用1〜2ヶ月は怖くて夜も40cmを使ってたんですが今は使ってません。最大30cmまで減りましたし、交換する頻度も減りました。最近ナプキンの経済負担について、ニュースや記事を目にする機会が増えましたが、量が減ることで購入するナプキンの量も相対的に減りましたね。ピルの服用を続けるコストはあるものの、カラダの変化がちゃんとあったので、私は服用してよかったなと思っています。
山田先生:毎月の出血量が多いままだと貧血にもなりやすいので、ピルのおかげで改善されてよかったです。低用量ピルを継続的に飲むことで、自然の状態に比べて子宮内膜を薄く保つことができるので、避妊だけではなく、出血量が減ったり生理痛が和らぐといった嬉しい効果が期待できるんですね。
多くの女性に知ってほしい「卵巣を休ませるための低用量ピル」という選択
sai+journalで女性のカラダや生理、低用量ピルについて知る中で、「タイムスリップできるなら、もっと早く知っておきたかった!」そう思ったのが“卵巣を休ませる”という考え方。低用量ピルを服用する理由として、月経過多の改善だけでなく、未来の「妊娠や出産」を考えた時に備えられることを多くの方に知ってもらえたらと思っています。
編集部YUI:服用し始めた2つ目の理由が「卵巣を休める」というお話でした。20代の頃は全く結婚や出産など気にせず生きてきたのですが(笑)。30歳を超えてから以前より自分のカラダのことや、結婚出産を意識するようになりました。卵巣を休めるという考え方は、sai+journalに関わるまで知らなかったのですが、改めて教えていただけますか?
山田先生:卵巣を休めるという表現が適切かどうか分かりませんが、みなさんの卵巣からは、望む望まないに関わらず、通常は月に1回排卵が起こりますよね。そして、2日以内に受精しなければ2週間後に生理がやってきます。これって、考えてみると妊娠を考えていない時には不要だと思いませんか?
編集部YUI:確かに(笑)妊娠を希望していない時期だったら、排卵はいらないなって今思いました。人によっては排卵痛もありますもんね。
山田先生:はい、排卵の時には卵子とその周りの卵胞液や血液が卵巣の壁を破ってお腹の中に飛び出し、人によっては排卵痛を起こすことがあります。また、毎月排卵を繰り返すことによって卵巣にダメージが蓄積され、将来的に卵巣癌の原因になるとも言われています。ピルを定期的に内服することで、不必要な排卵をスキップし、本当に排卵が必要な時期が来るまで卵巣をお休みさせてあげることができるのです。
編集部YUI:私自身、結婚も出産も体験してはいないのですが、それでもいつか訪れるかもしれない、という気持ちはあって。健康診断で「卵巣年齢チェック」などの項目を見ると、やっておいた方がいいのかな?と友人に相談したりした時もありました。「もしかしたら」とか「いつかは」というのは結構おざなりになりやすいので、卵巣を休めることで、少しでも未来に備えられるなら!と思って、少し副作用はあるんですが、服用を続けています。
山田先生:「卵巣年齢チェック」は、近年あたりまえに見かけるようになりましたね。AMHと呼ばれる検査項目で、卵巣の中にどのくらいの数の原始卵胞が残っているか、卵巣予備能の指標として使われています。卵巣の中にある卵子の数は、生まれたての赤ちゃんの時には約200万個ありますが、年齢とともにどんどんと数が減ってゆき、思春期を迎えた時点で約30万個、30代では約2〜3万個、閉経時には0となります。
編集部YUI:それってどんどん減っていくってことですよね….。自分のカラダにあとどのくらい残っているのか、知るのが怖い気持ちもありますが、やっぱり知っておきたいです。
山田先生:目安としてですが、15歳から49歳まで毎月1個排卵するとして計算すると、生涯で排卵されて減る卵子の数は約400個。なので、ピルで排卵を抑えたとしても、年齢と共に自然に減ってしまう数のほうが圧倒的に多いことがわかります。
ピルによって卵巣を休めることはできますが、実はピルを飲んでいる間にも卵巣年齢は進んでしまいます。不妊治療の技術が上がり、40歳を超えて妊娠する方も珍しくなくなってきましたが、不妊治療には様々な負担がかかるだけでなく、妊娠出産にかかるリスクも高くなるため、できることなら治療の必要のない若い年齢で妊娠の計画を立てることをおすすめします。しっかりとライフプランを立てて、必要な時に上手にピルを使っていきたいですね。
編集部YUI:そうですよね。ピルの服用に関しては、副作用の可能性もあるので「なんのために服用するか?」理由の部分が大事だなと感じています。月経過多や生理痛、PMSなどココロとカラダに直接起こるマイナスを取り除くだけでなく、予防や未来に備えるためという理由がプラスされたら、服用のハードルも下がっていくのかもしれませんね。
山田先生:女性の働き方が変わり、日々めまぐるしいライフスタイルを送っている方にとっても、ピルは心強い味方になってくれます。気にはなっているけどなんとなく薬は怖い、周りで使っている人がいないから分からない、という相談をよく受けますが、始めてみると「もっと早くから飲んでおけばよかった」という声に変わることがほとんどです。ぜひ検討してみてくださいね。
編集部YUI:最後に。sai+journalは「女性のウェルネス」に関する正しい情報をお届けすることや、医師への相談が気軽にできるようなメディアにしたい、という思いで始まりました。卵巣を休める話もそうですが、私自身が知って「もっと早く知っておけばよかった!」そう思うような情報も、編集部員として、発信できたら思っています。次回は、低用量ピルの副作用「不正出血が1ヶ月ちょっと続いた話」をお届けします。
※低用量ピルの効果や副作用には個人差があります。