人工妊娠中絶に関する基礎知識について

人工妊娠中絶という言葉は聞いたことあるけれど、具体的な内容は知らないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。ここでは、人工妊娠中絶に関する基礎知識をまとめました。

人工妊娠中絶って何?母体保護法とは?

人工妊娠中絶とは医療の力を使って妊娠を終了させることを言います。平成25年12月13日に改正された母体保護法の第一章、第二条では「人工妊娠中絶とは、胎児が、母体外において、生命を保続することのできない時期に、人工的に、胎児及びその附属物を母体外に排出すること。」と定義をしています。

今の一文でも出てきましたように、人工妊娠中絶については、母体保護法によって厳密に定められています。母体保護法とは不妊手術及び人工妊娠中絶に関する事項を定めること等により、母性の生命健康を保護することを目的として定められた法律です。この法律によって人工妊娠中絶の手術の時期や手術の方法などについて細かく定めているのです。

人工妊娠中絶はこの母体保護法によって対象者が限定されています。人工妊娠中絶の対象となる条件は、妊娠の継続または出産が身体的または経済的理由によって母体の健康を著しく害するおそれがある場合、または暴行若しくは脅迫によってまたは抵抗若しくは拒絶することができない間に姦淫されて妊娠した場合としています。ここに当てはまらない場合には本人が希望をしても妊娠中絶をすることができない場合もあります。

人工妊娠中絶の手術の時期は?

人工妊娠中絶の手術は、手術を受ける時期によって手術方法は異なります。妊娠12週未満のいわゆる妊娠初期といわれる段階では子宮内容除去術として掻爬法または吸引法が行われます。掻爬法とは子宮内の内容物を機械を使って掻きだす方法で、吸引法は機械を使って子宮の内容物を吸いだすという方法です。

どちらも、静脈麻酔を使いますが、手術そのものは10~15分程度で終了し痛みや出血も少ないです。そのため、手術当日に帰宅できることがほとんどです。手術の費用は10万円~15万円程度かかります。

一方、妊娠12週〜22週未満の場合には子宮収縮剤で人工的に陣痛を起こして出産をさせる方法を行います。もちろん、出産といってもこの週数に体外から排出するため生きていくことはできず、死産という扱いとなります。お薬を使って出産のときと同じ経過をたどらせますので、陣痛のような強い痛みがあります。

施設によっては無痛分娩と同様に硬膜外というところから麻酔を注入して下半身だけ麻酔を聞かせて痛みを和らげるというところもありますが、多くの施設では麻酔などを使用せずに、処置を行います。また、出産と同じ経過をたどるため身体へも負担がかかってしまい、入院が必要になります。出産と同様に自費となる診療のため、費用は病院によっても異なりますが相場として40~50万円以上、あるいはもっとかかる場合もあります。

この週数を超えた場合には母体保護法によって人工妊娠中絶を行うことはできません。

人工妊娠中絶の手術の影響は?

人工妊娠中絶の手術を受けた後に不安となるのが手術による影響です。少し前にとあるテレビ番組で人工妊娠中絶が不妊の原因となると芸能人が発した言葉で物議をかもしだしたことは記憶に新しいでしょうし、この言葉でさらに不安になってしまったという方もいらっしゃるかもしれません。

日本産婦人科医会では人工妊娠中絶は将来の妊娠に対して影響を及ぼさないと明言をしています。ですが、これはあくまで人工妊娠中絶処置後にも医療機関に通院し定期的に診察を受けた場合としています。

なぜ、定期的に診察を受けないと不妊に影響する可能性があるのかというと、その処置が関係しています。アッシャーマン症候群といい、人工妊娠中絶の時に子宮内容物を搔爬した場合、子宮内膜がこの時に癒着を起こしてしまい、それが不育症の原因となることが考えられており、不育症となったことによって流産しやすい体になるということが考えられているのです。ですが、施術を受けた後に放置をせずに病院やクリニックで専門の医師から経過をしっかりと診てもらうことでこのリスクを回避できる可能性も十分にあるのです。

また、人工妊娠中絶そのものがどの処置であろうと母体に身体的にも精神的にも、金銭的にも負担がかかるというのも手術による影響であるといえます。

人工妊娠中絶に必要な書類は?

人工妊娠中絶を受けようと思った方はまず、病院やクリニックなど医療機関を受診していただき、検査を受けて、週数の診断をしつつ母親や家族とよく話し合い、妊娠を継続するか手術を受けるかを決定します。

そのうえで手術を受けるという方向性になった場合には、同意書が必要となります。同意書は、本人だけでなくパートナーの同意が必要となるのですが未成年の場合には保護者の同意も必要です。また、性暴力などによる妊娠でパートナーがいないという場合や、パートナーが死亡してしまったという場合にはパートナーの同意なしでも治療を受けることができます。

また、妊娠12週〜22週未満で中絶手術を受ける場合には手術後に役所に死産届を提出し、胎児の埋葬許可証をもらう等の行政での手続きも必要になります。

人工妊娠中絶の手術後のケアは?何日で退院?

先ほどもお話ししたように、妊娠12週未満で手術を受けた場合には手術当日に退院できることがほとんどです。麻酔からしっかりと覚醒し、出血量が少ない等、医師が退院できると診断すればそのタイミングでの退院が可能です。今回は妊娠12週から妊娠22週未満で人工妊娠中絶を受けた場合のケアについて解説します。

妊娠12週~妊娠22週未満でお薬を使って陣痛を起こして胎児を娩出したあとは安静にしながら体調を戻しつつ、子宮の収縮を促進するお薬や乳汁の分泌を止めるためのお薬を使用していきます。おおむね、中絶後2日ほどで退院できます。ですが、退院については個人差があり、体調がどのくらい元に戻っているかや子宮の収縮状況、感染症などを起こしていないかなど、状況によって退院日が延びることもあります。

監修:クリニックフォアグループ医師

公開日:1月12日

厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei_houkoku/18/dl/kekka6.pdf

公益社団法人日本産婦人科医会 http://www.jaog.or.jp/qa/confinement/ninsinshusanqa5/

https://www.jaog.or.jp/qa/confinement/ninsinshusanqa6/

日本産婦人科医会 https://www.jaog.or.jp/sep2012/JAPANESE/teigen/hou.htm

https://www.jaog.or.jp/qa/confinement/ninsinshusanqa7/

福岡県看護学会 https://fukuoka-kango.or.jp/kenmin/sos/artificial_abortion/

慶応義塾大学病院 https://www.niph.go.jp/wadai/mhlw/1994/h060810.pdf

http://www.med.miyazaki-u.ac.jp/home/clinicalpathway/wp-content/blogs.dir/5/files/2013/01/5a94ecd9ead7620cc4b28bc9c891e803.pdf

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